澪標 ―みおつくし―

「ほんの少しの工夫」でどんなことでも解決できるということ

四辻 伸吾
大阪大谷大学教育学部准教授
2020年4月27日

 この3月まで副校長として勤めていた大阪教育大学附属平野小学校では、「未来そうぞう科」という新教科を立ち上げて学習を進めています。この教科はどんな状況においても、共によりよい未来を「そうぞう(想像・創造)」しようと力を発揮し、自分、集団、社会、自然などに対して多角的・多面的にアプローチし続けることができる子どもをめざしています。

 この「未来そうぞう科」は平成28年度から始めていますが、その前年度の授業において子どもたちが学習の中で、まさに「未来を『そうぞう』する」場面があり、これが後の「未来そうぞう科」の新設へとつながるきっかけの一つとなります。

 附属平野小学校では、5年生の総合的な学習の時間において、校内にある土地を利用して自然体験が行われてきました。自分たちだけの村をつくり、栽培活動や村の整備活動を進めていきます。年々規模を拡大し、栽培活動によって収穫物もたくさんでき、子どもたちが自分たちの力で田畑や小川、樹木や井戸などもある自然豊かな場所へと変えていきました。

 2015年度の5年生は「1粒の種から地球を考えよう」とテーマを設定し、自分たち一人一人の小さな活動から「地球規模」の大きな課題を考えることができるような学習展開を想定して、活動を進めていきました。その活動の中で、子どもたちはグループに分かれて自分たちが育てたい作物を考え、自分たちがそれぞれ管理する畝で責任をもって栽培活動を行っていました。その中の一つのグループは「枝豆」を植えその成長を観察してきました。しかし、実際の種まきの時期と成長の様子から、「枝豆」の収穫時期が夏休みになってしまう可能性が高いことがわかりました。

 これを受け、教員のもとに児童が訪れ「このままだとせっかくの枝豆が収穫できなくなるので、夏休みの登校日を作ってください」と訴えてきました。しかし附属平野小学校は、公共交通機関等を使って広域から通学してくる児童が多い学校であるので、安易に登校日等を設けることができません。教員は「登校日は作れないので、もっとしっかりと考えを深めて、自分なりの解決方法を見つけてごらん」とアドバイスをしました。

 実際、枝豆は時期が過ぎると「大豆」へと変わっていきますので、「大豆」を総合的な学習の時間のテーマにするとさまざまな学習方法が見つかる可能性があるということを踏まえて、解決方法を考えてほしいと伝えました。ところがこの教員の声を聞いた子どもたちは、「時期が過ぎると大豆になるのは十分にわかっていますが、ぼくたちは枝豆を収穫したいんです」と言って、不満な気持ちのまま帰っていったのです。

 次の日、その子どもたちはすがすがしい表情で教員のもとを訪れ、「先生、いいことを考えました」と満面の笑みを浮かべました。すると「やっぱりぼくたちは枝豆を収穫したいので、今の枝豆を根っこから抜いて持って帰り、家の庭で育てます!」と言ってきたのです。根から引き抜いたものを家の畑で再び根付かせるということは難しいことかもしれませんが、「登校日を作ってほしい」という要望が聞き入れられなかったことからやる気をなくしたり、不満をもったままにしたりするのではなく、学校の状況や枝豆への強い思いを踏まえて、ユーモアあふれる方法での自分なりの解決へ導いていきました。

 自分にとって大きな壁に直面したときに、どのようにしたらよいかわからず途方にくれてしまったり、あるいは不満を抱えたままやる気を失ったりしてしまうなどのような状況についつい陥ってしまいがちです。しかし、そんな課題に直面したときこそ「ほんの少しの工夫」「ほんの少しのユーモア」で「どんなことでも解決できるんだ」という姿勢で臨み、そして実際に課題を解決した成功体験を少しずつ重ねていくことで、まさに「未来を『そうぞう』する子ども」が育っていくのではないかと思います。

 (大阪市平野区・よつつじ・しんご)



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