澪標 ―みおつくし―

デートDV問題の理解促進を

多賀 太
一般社団法人ホワイトリボンキャンペーン・ジャパン共同代表/関西大学教授
2020年8月31日

 デートDVとは、婚姻関係にない交際相手同士の間で起こる暴力のこと。ごく一部の若者たちだけの問題と思われがちですが、実は私たちにとってとても身近で深刻な問題です。

 2016年に「認定NPO法人エンパワメントかながわ」など5団体が1都10県で実施した調査によれば、デートDV予防教育を受講した中学・高校・大学生で交際経験がある1329人のうち、女性の45%、男性の27%が、交際相手から暴力を受けたことがあると答えたのです。

 ここでの暴力には、殴る蹴るといった「身体的暴力」だけでなく、返信が遅いと怒るといった「行動の制限」や、「バカ、死ね」などの言葉で相手を傷つける「精神的暴力」などの行為も含まれています。

 「そんなささいなことまで暴力だなんて目くじら立てていたら交際なんかできなくなる」と思う人もいるかもしれません。確かに、イライラしていてつい相手にキツいことを言ってしまうことは誰にでもあります。日頃から互いの気持ちを話し合える対等な関係なら、たまにそのようなことがあっても心配はいらないでしょう。

 しかし、深刻なケースでは、そうした一見ささいなものも含めた暴力が何度も繰り返されるうちに、一方が他方の言動をコントロールして精神的にも支配するような関係になっていきます。そしてついに、被害者はどんなにひどい暴力を受けても加害者の支配から逃れられず、別れられなくなってしまうのです。だからこそ、深刻になる前の段階で、本人たちや周りがその問題に気づいて言動を改めていくことが重要です。

 特に女性で深刻なのが「性的暴力」の被害です。避妊への非協力6・2%、同意のない性行為6・0%、裸や性行為の撮影4・7%といった深刻な被害状況がうかがえます。

 また、内閣府が2017年に行った「男女間における暴力に関する調査」では、交際経験がある人のうち交際相手からの暴力で「命の危険を感じた」人が女性では4・5%、男性でも1・4%います。

 こうした喫緊の課題に対応すべく、2018年に「NPO法人デートDV防止全国ネットワーク」が設立され、デートDV予防教育の普及等を目指した全国的活動が展開されています。相談窓口やデートDV問題を理解するための総合情報ウェブサイト「ナタロン」(https://notalone−ddv.org/)も開設されました。

 私が共同代表を務めるホワイトリボンキャンペーン・ジャパン(https://wrcj.jp/)も、この活動に参加しながら、特に若い男性たちに向けて、デートDV問題の理解と、加害者にも被害者にもならないためのアクションを呼びかけています。

 あなた自身が被害者でなくても、身近な誰かが被害に遭っているかもしれません。一人でも多くの人がデートDV問題についての理解を深め、身近な人から被害を打ち明けられたときには、被害を軽んじたり被害者を責めたりせず、相手の気持ちに寄り添って話を聞き、必要に応じて相談先などを紹介してあげられるようになることを願っています。

 (大阪府吹田市、たが・ふとし)



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