11月初旬、4年に一度のアメリカ大統領選挙があり日本のメディアも大騒ぎだったが、44年前の大統領選挙の時、私は高校留学でアメリカに居た。渡米した1976年7月は、建国200周年のお祝いムードにまだ沸いていて、ホワイトハウスの上に広がる花火を見ながら、「この国の歴史ってまだたったの200年?!」「アメリカ人といってもインディアン以外は皆他国からの移民ってこと!」と生意気盛りの17歳の私は思ったものだ。
1年間滞在したのは南部にある田舎の小さな町だったが、どの家もセントラルヒーティング、システムキッチン、1人1台の車、庭にプール、夏休み1カ月と、やはり映画どおりの豊かな国。日本はすでにGDP世界第2位になっていたが、男性は企業戦士と呼ばれ週6日働いていて、国民生活の豊かさは日米で雲泥の差でした。その年の11月、カーター氏が大統領に選ばれた。
当時、ベトナム戦争が終わった直後で、サイゴン陥落時に救助にきたアメリカ船に乗せられた子どもたちが、全米の市町村コミュニティーに分散して引き取られていた。そもそもなぜ、アメリカがアジアの果てのベトナムまで行って戦ったのかを同級生に聞くと、「北から押し寄せる社会主義・共産党軍を食い止めるために、アメリカは南ベトナムを助けにいかねばならなかった」という。子どもレベルでも疑問符のつく話だが、先祖ばらばらの国民が星条旗の下に団結し、世界をリードする自国への誇り、リーダーとして選んだアメリカ大統領への敬意には驚いた。日頃、自国に自虐的で外国に憧れがちな日本人とはえらく違う。
高校生活では、熾烈(しれつ)な大学受験戦争に苦しむ日本の高校生と違い、塾もなく週末はパーティーに呆(ほう)けるアメリカの高校生。しかし、なぜか大学となると突然アメリカの大学は世界のトップレベルとなる。クラブ活動でも、日本では野球部なら野球一筋の高校3年間となるが、アメリカの高校のクラブ活動においては、シーズンごとに違うクラブで活躍する子がいる。野球シーズンが終わればアメフト部へ、オフにトレーニングなんて全然しない。なのになぜ大リーグが世界一なのか。資源のない日本は根性と努力で勤勉に働くしかなく、それでいつかアメリカに追いつけると思っていた。
しかしその後、アメリカはインターネットを広げ、ITで世界をけん引し、GAFAという巨大IT企業を生んだ。9・11もアフガン戦争もイラク戦争もあったけれど、されどアメリカ。冷戦も乗り越え、今はソ連でなく中国とやりあっている。
アメリカという国、自分が1番というちょっと鼻につくこともあるが、親分肌で、面倒見の良い人のよさが私は結構好きでもある。一方で、多様性を受け入れる懐の深さがあると思っていたのに、昨今の報道で人種差別がこれほど根強く残っていたことも知り、改めて驚いた。隠れていたものが露呈したのかもしれない。
今回の大統領選挙もようやく決着がつきそうだ。「分断ではなく統一を」掲げたバイデン氏が、勝利宣言での演説にもあったように、「世界で再び尊敬される国に」ぜひなってほしいものだ。
(大阪市浪速区、さわい・さだこ)
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