澪標 ―みおつくし―

色もいろいろ

澤井 貞子
大阪府眼科医会理事
医療法人沢井眼科院長
2021年3月22日

 私は眼科医なので、日々、患者さんから見え方に関する相談を聞いています。かすむ、見えない、ボヤっとするなどですが、色が分からないという訴えはあまりありません。もちろん、色が分からなくなるという病気もまれにあるのですが、色覚に関しては、生まれつき色の見え方が多くの人と少し違う人がいます。

 医学的に「先天色覚異常」と言い、以前、色盲と言われましたが、決して白黒の世界ではなく、また視力に異常もありません。ただ多くの人と色の感覚が違う色覚特性を持つため、色を混同したり誤認したりします。見分けにくい組み合わせは、程度やタイプの差もありますが、赤と緑、だいだい色と黄緑、茶色と緑、緑と灰色と黒、ピンクと灰色、青と紫、赤と茶色と黒、ピンクと水色などです。

 男性で20人に1人、女性で500人に1人程度、男性の割合でいうとクラス1組に1人の男子と結構な割合ですが、皆さんの周りにおられることに気付いているでしょうか。本来、他人がどう見えているかは、本人には分かりようがありません。ましてや、生まれつきの感覚異常なので、「他人は、どうも自分と違う色に見えている」と認識するのはかなり成長してからです。

 色覚特性を持つ人には、色間違いや誤認をして、注意力散漫や理解不足と誤解されたりした経験から、何とか周りに気付かれないように工夫や気遣いをする人も多いと聞きます。

 色覚の検査は、色覚異常の方が判別困難な色を混ぜて表された文字(仮性同色表)が読めるかどうかでスクリーニング検査ができます。以前は、全国の小学4年時に全校生徒対象で検査していましたので、昭和生まれの人は覚えがあるでしょう。色覚異常は生まれつきの特性ですので、治癒も進行もしないですが、日常生活に支障はありません。それでも、学校・社会生活を送る上で、また将来の進路や仕事を決める時に、自分の色覚特性を認識しておくことは、自分を守るため、快適に過ごすためには大切なことだと思います。

 まだ社会の色のバリアフリーが不十分なため、戸惑われる場面も多いようです。例えば、充電完了ランプの色の変化、熟れたトマトと緑のトマト、緑の黒板の赤い文字、鉄道の路線図などの判別が難しいとされています。色覚の多様性に配慮された製品や情報が望まれます。お日様を茶色に塗って怒られる子も、リトマス紙の色の変化が分からず理科が嫌いになる子も作ってはなりません。偏見のない、社会全体の正しい理解も必要です。

 4月には、新入学や新社会人として新しい環境に身を置く方も多いです。期待と不安の中に、人知れず色に関する不安を持つ方もいることを知っていただければと思います。友人と焼き肉を食べに行くと、肉が焼けたか生かの区別がつきにくくて手が出せず、肉の焼き始めの順番を覚えておき、人が取り上げた後に続いて取るようにしているという話を聞きました。そんな時、「これ焼けてるよ」と、すっと周りが教えてあげる、そんな優しい世の中であってほしいです。

 (大阪市浪速区、さわい・さだこ)



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