澪標 ―みおつくし―

「常識」と「非常識」の転換

西山裕子
MiLIFE(ミライフ)代表
マーケティングPRプロデューサー
2021年5月10日

 今年3月、九州で1週間を過ごした。福岡〜大分〜熊本〜宮崎と観光しつつ、シェアオフィスやカフェで、予定していた仕事を滞りなく進めることができた。新聞記者の取材はオンラインで行い、「どこでも仕事ができるなぁ」と感じたものだ。

 1999年、会社員だった頃、ノートパソコンが社員に一人一台支給された。当時の私は、2人の小さな子どもの育児と、仕事の両立に大変苦労していた。会社の机で黙々とパソコンに向かうなら、家で仕事をするのも同じではないかと、「週に何時間か在宅勤務可能な制度」を提案したことがある。しかし、ワーキングマザーの管理職から、「ちゃんとした仕事をするには、家では無理!」と、即、却下された。2021年の今、テレワークが強く推奨されている。顧客からも「まずはオンラインで面談しましょう」と勧められ、昔を思い出すと、隔世の感がある。

 「選択と集中」が推奨された時代もあった。しかし、旅行や飲食、外国人観光客に特化した会社は、コロナ禍で大打撃を受けている。先日、旅行業を営んでいたスタートアップの社長から相談を受けた。補助金を活用し、借金もして三つの事業を始めるという。リスク分散だ。

 個人も「終身雇用」「この道一筋」でなく、「転職」「パラレルキャリア」が一般的になりつつある。副業を解禁する企業も増えてきた。「本業がおろそかになる」と懸念していた会社も、昇給を約束できない中、従業員を縛ることができなくなっている。「収入や経験値が増えるので、副業を始めた」と言う人が、私の周りに何人もいる。

 中小やスタートアップの社長は、個性的でぶっとんだ人が多い。普通の人が不便を感じながら我慢することを、解決に向け挑戦している。最近、株式投資型クラウドファンディングとして日本初の「ファンディーノ」運営会社代表と、イベントをする機会があった。このサービスは、「事業へ共感し、その成長を応援したい」という個人投資家が、未公開企業の株を少額(10〜50万円)購入するものだ。2017年から始まり、6万人を超す会員がおり、毎月増加しているという。

 未公開企業は株主が少ない方が、管理しやすいと言われている。しかし、初期のスタートアップが、機関投資家から数億円の資金調達をすることは難しい。一方、成長には資金が必要だ。株式投資型クラウドファンディングは、この課題を解決する、常識を破るモデルだ。賛否両論があるものの、今後注目したい。

 「常識」が「非常識」になり、「非常識」は「常識」に変化する。それならば、違和感を持つことは疑い、誰が何と言おうと、自分が信じることをやれば良いのでは。10年後は九州でなく、宇宙で仕事をしているかもしれない。

 (大阪市北区、にしやま・ひろこ)



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