澪標 ―みおつくし―

関係ないと諦めている人が、真ん中にくるような社会に

中原美智子
株式会社ふたごじてんしゃ代表取締役/社会福祉士
2021年6月28日

 私がふたごじてんしゃの活動の中で感じた違和感は、自転車を日常使いしているママ自身が「自分が困っていることを知らない」「ルールを知らない」ということでした。例えば2輪自転車で不便なことがあっても「こんなものだろう」という気持ちで乗っている人が多いのに驚き、常態化する道交法違反についてもひっかかり始めました。

 そこで、まずは困っていることに気付いてもらうために試乗会を開き、次に自転車移動を諦めていた人たちに、「双子でも自分の力で出かけることができるんだ」という希望を届けました。

 そして見えている問題をクリアにするため、常態化する法律違反を実態に合うようにするにはどうすればいいかを調べ始めました。2021年6月から、ようやく全国どこにいても未就学児なら自転車に同乗させてもよくなったのですが、それまでは6歳の誕生日を迎えると自転車に乗せてはいけないルールでした。

 このルールを知らない方が多い一方で、「リースで借りている自転車は、6歳の誕生日を迎えたので返却して30分の距離を徒歩通園しなくてはならなくなった」という相談や、「幼稚園から徒歩通園を求められている」といった、時間に余裕のない働くママからの声が届くようになりました。

 ひとたび事故が起きればルール違反をしているママがとがめられることでしょう。普段は誰も気に留めることなく使っていますが、不安定な状況を改善し実態に合うような法律に整えること、そして法律が変わることで2輪自転車も含めた、より使い勝手のよい子ども乗せ自転車の開発が全国に広がればと考えるようになったのは、自然なことでした。

 ただ残念なことに、なぜ道路交通法では幼児なのに各都道府県規則では6歳未満となってしまったのか、なぜ重量制限があるのに人は年齢制限なのかなど、分からないことだらけでした。また、実態に合うよう法改正をするにはどうしたらいいのかなど、あちこち尋ね歩きましたが明確な答えは誰も持っていませんでした。アンケートを実施したり署名活動を続けてきたことが功を奏したのかは分かりませんが、各都道府県の道路交通法がこの一年で改正されたのです。

 これで、誰でも卒園までは堂々と胸を張って自転車送迎ができるようになりました。私も、これで安心してふたごじてんしゃを届けられます。「双子でも自転車でお出かけしたい」という思いが、こんなところにまで来てしまったことに自分でも驚いています。

 ふたごじてんしゃを届けたママパパから、こんな声をいただきました。「これまで自分がこれほどまでに不便な生活をしていたとは知らなかった」「出かける機会が増え、声をかけられ、自分たちが存在していることを実感した」「妻が、よく声をかけられるうちに日本語が話せるようになった」。

 このような声に触れるたびに、企業活動は利益追求のためだけにあるのではないと感じるのです。私はこれからも、キラキラした広告は自分には関係のないものだと諦めている人が真ん中にくる社会になるよう、大好きな自転車でかなえていきたいです。さまざまな困難を抱えた人たちの横に並び、同じ景色を見て、新しい自転車の文化を創る仲間を増やしながら、共に自転車をこぎ続けます。

 (兵庫県尼崎市、なかはら・みちこ)



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