澪標 ―みおつくし―

伸びる0次流通 未来を創る、クラウドファンディング

西山裕子
M i L I FE(ミライフ)代表
マーケティングPRプロデューサー
2021年8月2日

 クラウドファンディングに、参加されたことはあるだろうか。「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた言葉で、不特定多数から少額の資金を得ることを指す。金融機関やベンチャーキャピタルより手軽で、新たな資金調達の仕組みとして近年伸びている。大手サービスのマクアケは、会員数が2021年9月期第1四半期で139万人に達したという。コロナ前の2019年の同時期は51万人だったので、倍以上の伸びだ。

 私は仕事柄、スタートアップや中小企業から、自社のクラウドファンディングを応援してほしいと頼まれることが多い。農業活性化のための野菜ジュース、防災システムの開発、ザンビアとのオンラインスタディツアーなど、さまざまなものを経験した。資金が集まる過程が公開され、リターンが得られると、参加意識も高まり面白い。

 量産前の新サービスや製品を、先行して販売する新たな商流は、「0次流通」と呼ばれている。クラウドファンディングや、会員向けの限定販売などはこれに当たる。「1次流通」は小売販売市場、「2次流通」は中古品市場だ。コロナ禍で、街での買い物が制限されるが、市場に出る前の0次流通や、メルカリなど中古品の2次流通が広がりを見せているのは興味深いところだ。

 今年6月、大阪大学発スタートアップのミルイオン社から私に、新技術を用いて毛髪から健康分析をするサービスを事業化したいと相談があった。クラウドファンディングで市場ニーズを探ることになり、全面的なマーケティング支援をした。まず、似た分野での成功例を徹底研究し、自分たちの独自性を明確にした。技術を開発した准教授にも研究室で話を聞き、理解を深めた。遺伝子、血液や尿検査とは違い、ミルイオンが提供するのは、髪に蓄積された「過去から現在」の情報を分析するという点が新しいと、そこを強調した。

 クラウドファンディングを成功させたスタートアップにも話を聞いたところ、目標金額は低めに設定し、確実に達成するべきだという。購入者は、知り合いが3分の1、知り合いの知り合いが3分の1、残りが新規の人が目安とか。元からのファンや、友だちの多さが重要だ。

 案内ページの原稿は、興味を持ちそうな人に見てもらい、10回以上の更新を行った。ミルイオンは知り合いからの購入はあまりなかったが、開始後1日で目標金額を達成した。ほっとしている。

 クラウドファンディングの良いところは、事前に資金を集める、つまり前払いであることだ。資金不足のスタートアップや中小企業にとっては、ありがたい。多くの製品は、発売するまで本当に売れるかどうか分からない。性別や年代など、どの層に受け入れられるかが分かる、テストマーケティングにもなる。販売実績がつくことで、本格販売時のPRにもなる。

 0次流通で成功モデルを見つけ、1次流通に乗せることで、まだ存在しない、未来の夢が実現するのだ。

 (大阪市北区、にしやま・ひろこ)



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