澪標 ―みおつくし―

「怨親平等」の精神で世界平和を

金岡 重雄
株式会社カナオカ機材取締役会長
CS研究会会長
2021年8月23日

 世界的なコロナ禍で、開催か中止か、賛否両論が沸騰する中、無観客という前代未聞の状況で開催された東京オリンピックが大過なく閉幕したことは、誠に喜ばしい限りだ。関係者の皆さまに「ご苦労さまでした」とねぎらいの言葉とともに、感謝の意を込めて拍手を送りたい。

 「多様性と調和」「復興五輪」を主要テーマに掲げた今回の大会には、世界205の国と地域に加え、国際オリンピック委員会(IOC)が結成した難民選手団が参加した。参加選手は過去最多の1万1千人で、女性が占める割合は48・7%と過去最高。17日間にわたり、9都道府県の42会場で33競技339種目が実施された。

 日本選手は過去最多の583人(男子306人、女子277人)が参加。獲得メダルは金27個、銀14個、銅17個の計58個で史上最多を記録する活躍ぶりだった。

 開催前は「五輪中止!」と声高に叫んでいた人も現金なもので、始まってしまえばつらくて厳しい鍛錬を重ね続けて参加切符を勝ち取り来日した、世界各国からの若いアスリートたちの躍動に魅せられ、心揺さぶられたようだ。

 勝者のうれし涙、敗者の悔し涙、勝ち負け、国境の垣根を越えて、お互いに健闘をたたえ合う姿を見るにつけ、感動せずにはおられなかった。すべてのアスリートたちよ「ありがとう!」。

 ただ、IOCの「アスリートファースト」を度外視した過剰な商業主義、強権的な手法をあちこちに見せつけられた五輪でもあった。IOCの独占的な財産と言われている五輪の在り方は変わらないかもしれないが、もう一度、近代オリンピックの父・クーベルタン男爵の「オリンピックは、勝つことではなく参加することにこそ意義がある」という五輪の精神に立ち返り、開催の在り方について考え直さなければならないだろう。

 それにしても、「安心安全な大会」をお題目のように唱えるだけで、場当たり的な対応しかできなかった政府の“モタモタぶり”には、あきれるばかりだった。政府に対する逆風は、さらに強まるのではないか。また、コロナの正しい情報を把握せずに、危機感をあおるだけの情報を連日、流し続けているマスコミに対する不信感も募る一方だ。

 ところで、1964年10月に開催された前回の東京オリンピックのあと、高度成長期の最中にもかかわらず、「昭和40年不況(証券不況)」と呼ばれる景気後退に直面した。果たして、今回はどうなるのだろう。

 終息が見えないコロナ禍の中、相次ぐ緊急事態宣言の発出で飲食関係者をはじめ、中小企業など苦境に立たされているところが続出している現状を見るにつけ、近い将来「大不況が必ず来る」ことは間違いない。この予想は外れてほしいが…。

 最後に、8月6日に広島の、8月9日に長崎の、それぞれ76回目の「原爆の日」を迎えた。二度とこのような惨禍を起こさないよう、平和の祭典・オリンピックにならい、日本人の素晴らしい魂・「怨親平等(おんしんびょうどう)」の精神を世界中の人が心に刻みつけ、世界が平和にならんことを祈ってやまない。

 (大阪府東大阪市、かなおか・しげお)



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