澪標 ―みおつくし―

パラリンピックの可能性!多様性と人間の限界への挑戦!

真田 明子
しんあい高等学院/明蓬館SNEC大阪・玉造 学院長
2021年8月30日

 「1時間20分14秒」−。「レーサー」と呼ばれる競技用車いすで走る車いすマラソン(男子)の世界記録です。フルマラソン(男子)の世界記録2時間1分39秒を大きく上回ります。時速約31キロのスピードで、車いすを巧みに操るテクニックは、手に汗握る応援に力が入り風を切ってゴールするシーンに感動します。用具やルールの工夫だけでなく、パラアスリートの身体能力の限界への可能性は計り知れません。人間がもつ潜在的能力を追求することからそのデータ(記録)が塗り替えられていくことも、パラリンピックの魅力の一つです。

 東京パラリンピック2020では、206の国、22競技のパラアスリートたちがメダル獲得に挑みます。義足や競技用車いすの開発が進み、記録がどんどん上がっていますが、どんなに優れた用具でもそれを使う人の能力が低ければいい結果は望めません。用具を使いこなす力と身体能力の限界に挑むことは、圧倒的な努力が必要です。

 スポーツ義足制作の第一人者である臼井二美男さんは「パラアスリートが人間の限界に挑戦し続けることで、身体能力の限界、すなわち(障害があっても)できることの可能性について、知ることができる。身体能力の限界がわかることで、リハビリにも応用できます」とおっしゃっています。

 パラリンピックの見どころは、パラアスリートのパフォーマンスはもちろんですが、障害を乗り越え大会出場に至るまでのプロセス、その人生になくてはならないサポーターの存在に注目することで、チームで勝ち取ったパラリンピック出場チケットであることがわかります。そこには、健常者、障害者の垣根はなく、同じ目標に向かう同志の集まりです。

 パラリンピックは多様性(ダイバーシティ)に富む、国籍、性別、年齢、障害の有無、宗教、価値観が違う人たちが集う大会です。

 認めあうというより、それが当たり前である。2004年アテネパラリンピックでの選手村で見た光景は今でも鮮明に覚えています。多様性が求められる現代において本来のあるべき姿を教えてくれる。パラリンピックにかかわった人が魅了されるのは、それが理想とする社会だと感じるからではないでしょうか。

 また、パラリンピックで開発された技術が、一般用向けの車いすや義肢装具の進化に影響を及ぼしています。パラアスリートの活躍が、私たちの日常をゆたかにすることに寄与し未来社会の創造へとつながります。

 メダルがすべてではありませんが、メダル獲得からパラスポーツの未来が開かれる。オリンピック新競技から子どもたちがスポーツに興味をもち始めたように、パラリンピックを見た障害のある子どもたちがスポーツに興味をもち社会参加する。多様性が当たり前の社会になり、誰一人取り残さない社会の実現は、パラリンピック成功のレガシーとなる。コロナ禍において開催したことへの意義や価値となると思います。皆さまの熱い応援がパラアスリートの力となります。

 コラムをお読みいただきパラスポーツに少しでも関心をもっていただけたら幸いです。ありがとうございました。

 (大阪市東成区、さなだ・あきこ)



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