なにわに生きる 次代につなぐ

 2019年が明けた。平成と新元号をつなぐ節目の年となる。新しい時代をつなぎ、結ぶ年ともいえそうだ。時代が変わろうとする中、次の時代を担う人たちに、何を引き継いでいくのか考える時間でもある。関西地域の中核都市として大阪の発展は欠かせないが、主役はあくまでも大阪に暮らす人たち。本紙では年間企画として「なにわに生きる−次代につなぐ」と題し、今を生きている私たちが次代につなぐものは何かを取り上げる。

第2部「国際化の波」(3)

2019年4月27日

文化の伝承 外国人が和食を支える

実際にニンジンやトマトで切れ味を見せるハイバーグさん。「日本人じゃないけど、心は大阪人」と、日本人には流ちょうな大阪弁で和ませる=大阪市浪速区

 2013年、「日本人の伝統的食文化」として「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。四季折々の自然の恵みから「食」を生み出すのは、多様な調理器具。特に、和包丁は洋包丁と明確な違いがあり、和食の根幹を担う。「包丁の切れ具合で味が変わる。だから、『切れ味がいい、悪い』なんです」。そう話すのは、カナダ人のビヨン・ハイバーグさん(49)。通天閣を仰ぎ見る大阪市浪速区に刃物専門店「TOWER KNIVES(タワーナイヴス)」を開いて8年目になる。

■切れ味に感動

 23歳の時にワーキングホリデーを利用して来日。日本人女性と結婚し、英会話講師やバーテンダーと職を移る中、営業で訪れた堺市の刃物メーカーで、「堺打刃物(さかいうちはもの)」に出合った。

 「包丁の切れ味に感動した」。2歳からデンマークの自然の中で育ったハイバーグさんにとって、刃物は日常の道具。「オノやナタも日本製だと切れ味がよくて、けんしょう炎にもならない。仕事も楽だという印象があった」。時を経て再び巡り合った「切れ味」が、人生を変えた。

 堺の刃物メーカーに9年間勤務。折しも海外では、和食文化の広がりとともに、和包丁の需要が高まっていた。料理人だけではなく、観光客も日本で和包丁を買い求めた。

 しかし、ハイバーグさんはその状況にもどかしさを感じていた。

 「販売員の説明が私から見ると足りていない。せっかく、職人がいい包丁をつくっても、本当の良さを伝え切れていなかった」。11年に専門店を立ち上げ、自ら店に立った。

■多言語で説明

 店内の壁や棚には、堺をはじめ、高知・土佐や兵庫・三木、新潟・三条など、国内各地で生産された刃物約450種が並ぶ。

 プロアマ問わず、国内外から客が訪れるが、ハイバーグさんはじめ、慣れたスタッフが英語やフランス語など多言語で切れ味や研ぎの重要性を説明。ニンジンやトマトで実際に切れ味を披露すると、客は感嘆の声を漏らす。

 近年、和包丁の輸出量が好調なのに対し、国内では包丁の販売数は減少傾向だ。量販店には安価な包丁が並び、家庭では包丁を研ぐ習慣も薄れてきた。「すごい残念。もっと、ものづくりを大切にしてほしい」と嘆く。

 「この見た目だからおもしろがられる。でも、信用もされない」。ハイバーグさんは苦笑する。「日本の伝統技術を世界に紹介する外国人」として、メディア出演も多い。来日して26年。失敗も重ねたが、職人から託された包丁の輝きがその道のりを物語る。

 「包丁は飾り物ではない。しっかりメンテナンスをして大事に使ってほしい。だから、右から左に売るのではなく、客が得する情報もしっかり伝えたい」。“和包丁の伝道師”としての決意だ。

 堺打刃物(さかいうちはもの) 堺市やその近辺で発達した技術で製造される和包丁やはさみの総称。鍛冶屋と研ぎ屋が別で作業をするのが特徴。鉄と鋼を接着させることで、優れた切れ味になると評価されている。


サイト内検索