なにわに生きる 次代につなぐ

 2019年が明けた。平成と新元号をつなぐ節目の年となる。新しい時代をつなぎ、結ぶ年ともいえそうだ。時代が変わろうとする中、次の時代を担う人たちに、何を引き継いでいくのか考える時間でもある。関西地域の中核都市として大阪の発展は欠かせないが、主役はあくまでも大阪に暮らす人たち。本紙では年間企画として「なにわに生きる−次代につなぐ」と題し、今を生きている私たちが次代につなぐものは何かを取り上げる。

第4部「働き方」(1) 「改革」の行方

2019年11月25日

鍵は把握と分散化

いち早く働く環境整備に着手してきた高嶋会長(左)と、今後の活躍に意欲を示す石本さん=大阪市城東区の三元ラセン管工業

 「残業がないのは助かる」。子育て中のため、パートで働いていた石本みゆきさん(44)は、昨年4月から思い切ってフルタイムに切り替えた。金属製チューブの溶接から成形まで、責任の重い仕事を担うようになったが、周りのフォローは手厚く、「やりがいがあって楽しい」と笑顔を見せる。

■誇りを持つ

 蛇腹状の部品メーカー「三元ラセン管工業」(大阪市城東区)は、中小製造業ながら、1990年代から週休2日や残業の削減を追求してきた。若者の定着率向上を図るのが狙いだった。

 全従業員の業務を聞き取って内容を整理。一人一人が他の業務もできて、互いに休みが取りやすくなるように資格取得などを奨励した。2007年には、書類をスキャナーで取り込み、データ上で管理。探す手間が減り、設計部門などの1人当たりの労働時間を1カ月で約40時間短縮した。

 技術力向上に努め、特注品に特化。価格競争はせず、無理な納期は設定しない経営手法で生産性を高め、利益率は上がり続ける。

 いち早くインターネットに着目し、情報発信を受注や従業員のモチベーションアップにもつなげてきた高嶋博会長(75)は「ものづくりを次世代につなぐため、若い人が町工場で誇りを持って働ける会社づくりをしなければならない」と力を込める。

■マイナスの変化

 働き方改革関連法が順次施行される中、その取り組み方が問われている。NTTデータ経営研究所の経年調査では本年度、働き方改革に取り組む企業の従業員は、取り組んでいない企業に比べ、働きやすさを感じている割合が3割弱高い64・1%。その差は前年度比で1割弱拡大した。

 「改革」の意義が浮かび上がった半面、マイナスの変化として、「収入の減少」や「部下のマネジメントのしにくさ」「生産性の低下」を挙げる割合が前年度に比べ微増した。

 労働環境に詳しい大阪府社会保険労務士会の田中英夫専務理事は「中間管理職は、部下の仕事を把握して合理化するのが重要。仕事の負担が特定の人に集中しないように分散し、チームで仕事をする発想が大事だ」と指摘する。

 一方、自社だけで問題解決できない場合もある。大阪労働局は、運送業者などの長時間労働を巡り、発注者側が無理な依頼を出さないように協力を求めている。NTTデータ経営研の加藤真由美シニアマネジャーは「働き方改革は、社会全体で相互理解を深めながら取り組む必要がある」と訴えた。

×   ×   ×

 少子高齢化を背景に、より良い「働き方」の実現が待ったなしの状況だ。多様な立場の人の力をどう引き出していくべきか。女性や障害者をはじめ、今後直面する人の増加が見込まれる介護との両立について、現場の実践を追った。

 働き方改革関連法 2019年4月から順次施行。残業時間の限度を原則45時間とする罰則付き上限規制や、年5日の年次有給休暇の取得義務付け、非正規雇用労働者の公正な待遇確保などが定められた。労働時間の上限規制など、中小企業は大企業より適用開始が1年間猶予された事項がある。


サイト内検索