なにわに生きる 次代につなぐ

 2019年が明けた。平成と新元号をつなぐ節目の年となる。新しい時代をつなぎ、結ぶ年ともいえそうだ。時代が変わろうとする中、次の時代を担う人たちに、何を引き継いでいくのか考える時間でもある。関西地域の中核都市として大阪の発展は欠かせないが、主役はあくまでも大阪に暮らす人たち。本紙では年間企画として「なにわに生きる−次代につなぐ」と題し、今を生きている私たちが次代につなぐものは何かを取り上げる。

第4部「働き方」(3) 発達障害者と仕事 

2019年11月28日

強み弱みオープンに

三箇さん(奥)にアドバイスを受けながら、デザインの仕事に取り組む小川さん=大阪市中央区

 「やっぱり、普通じゃなかったんだって安心しました」−。大阪市内でポップコーン専門店を運営する「Dreams(ドリームズ)」(大阪市中央区、宮平崇社長)で、パッケージなどのデザインを手掛ける小川葉津季さん(29)は、2年前を思い返し、笑みを浮かべた。

 発達障害の一つ、注意欠如多動性障害(ADHD)と診断されたのは、不安定なバイト生活で心身ともに疲弊していた27歳の時。その後、約半年間の就労移行支援を経て、今年8月から同社で働いている。

■48万1千人

 2005年に発達障害支援法が施行後、認知が進み、厚生労働省が18年に公表した「生活のしづらさなどに関する調査」によると、医師から発達障害と診断された人は、48万1千人と推計される。

 芸術系大学出身の小川さん。アルバイトでは失敗を繰り返し、どれも長続きしなかった。そもそも面接で落ち続け、就職活動の1社目で不採用通知が届くと、気持ちが切れた。

 18年12月から、発達障害者の就労支援を行う「エンカレッジ」(同市中央区、窪貴志社長)を利用。面接の練習と職場実習を経て、自分の強みを生かした仕事に巡り合えた。

 指導役である同社のブランドマネジャーの三箇淳司さん(32)は「ドタバタしているが、センスがある。今はできないことも、やろうとしていて前向き」と評価。小川さんは、日々の仕事内容や反省点と課題を書いた日誌を付ける。三箇さんからの返事が励みになっている。

 「遠回りはしたのかもしれない。でも、その流れがあったからこそ、楽しく働けている」。働く小川さんの表情は穏やかだ。

■適応力培う

 「エンカレッジ」は13年に創業し、発達障害に特化した就労支援を行う。パソコンスキルやビジネスマナー、自己理解の連続講座があり、グループワークなど利用者同士の交流機会を積極的に取り入れ、社会生活での対応力や経験を培う。

 期間は半年から最大2年。延べ189人(18年度まで)が就職につながった。一方で、利用者の多くは既卒者であり、同社の大学支援グループの山本愛子さんは「発達障害の人は学業と就職活動が両立できない」と指摘する。

 日本学生支援機構(JASSO)の18年度調査によると、発達障害の診断書がある学生は6047人。就職率は障害学生全体が79・5%に対し、発達障害学生は68・3%にとどまっている。同社では、現役学生に向けた支援を厚くし、スマートフォン向けのアプリ開発や大学と共同で企業とのマッチング会を開催している。

 山本さんは「発達障害の人は決して働けないわけではない。自分の強みと弱みを就活からオープンにして、自分に合った環境や職場を見つけ、働き続けることが大切」と話す。

発達障害 自閉症やアスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの総称。他人との意思疎通が苦手だったり、特定の物事へのこだわりが強かったりする。感覚過敏を伴うことも多い。2012年の文部科学省調査で、全国の通常学級に通う小中学生の6・5%が発達障害の可能性があると推計された。


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