街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第1部「進化続ける」(3) 夢洲は希望の島か

2020年1月6日

期待の中に課題も浮上

地盤改良工事が行われる夢洲の大阪・関西万博の予定地=大阪市此花区

 世界中から2800万人が来場し、2兆円の経済波及効果が予測されているのは、2025年に開催が決まった大阪・関西万博。9300億円の投資を呼び込み、年間1500万人の来場者を見込むのは、誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)。大阪府・市が進める二つの巨大プロジェクトの予定地が大阪市湾岸部の人工島・夢洲(ゆめしま)だ。期待が大きく膨らむ一方で課題も浮かぶ。

■合言葉は本気

 「25年になると、リアルとサイバーが完全に融合した後の世界が来るだろう。人類の次のステージが来たぞということが、新しく出せる展示を」(東博暢・日本総研リサーチ・コンサルティング部門プリンシパル)、「認知症に対するちょっと明るい未来に光を当てられれば」(遠山正彌・大阪府立病院機構理事長)−。

 19年12月に開かれた大阪・関西万博に出展する地元パビリオンについて話し合う有識者懇話会の初会合。万博の可能性を広げようと、医療や食、イベントなどさまざまな分野の専門家11人が活発にアイデアを出し合った。

 パビリオン出展を目指す学生グループもある。大阪府立大と大阪市立大の学生約40人で構成されるチーム「Honaikude」は、物理・医学・心理学・建築などさまざまな分野の学生が参画。合言葉は「大阪の学生の本気、見せたるで」。環境をテーマにしたミニパビリオンを作った実績を持ち、万博への出展を目指す。

 課題もある。政府は昨年12月の閣議で、会期を25年4月13日から10月13日までと、当初予定から20日間前倒しすることを決定した。会場は夢洲の約155ヘクタールで、会場建設費は1250億円、運営費は約810億円に上る。

■多い懸念の声

 一方のIRは当初、大阪府・市が相乗効果を狙って万博前の開業を目指していたが、万博後の全面開業も容認した。工期の厳しさが最大の原因で、夢洲にあるコンテナターミナルは物流基地としての役割を果たしており、日常的に大型車両が行き交う。

 市中心部と夢洲を結ぶルートは、舞洲側からの夢舞大橋と咲洲側からの夢咲トンネルの2本だけで、交通量の多い昼ごろはトラックの車列で渋滞することも少なくない。「万博の工事とIRの工事が重なれば、工期が守れるのか」「万博の来場者とIRの来場者を同時に対応できるのか」などという懸念の声は多い。

 府・市も道路の拡幅や海上ルートの確保、高架道路の設置など対応策を進めているが、万博は計画段階で、IRは誘致が決まったわけではない。

 さらに、大阪市を廃止し、四つの特別区を設置して府と再編する「大阪都構想」の住民投票が実現して賛成多数となれば、万博開催3カ月前の25年1月に大阪市は廃止される。不確定要素が多い難しい条件の中で、万博の開催は迫りつつある。国際公約を成功させるための綿密な計画が求められている。

ミニクリップ
 夢洲 大阪湾の中心にある大阪港のベイエリアに位置し、面積約390ヘクタールの広大な埋め立て地。公共工事の建設残土などに対応している。東側は高規格のコンテナ物流拠点が供用。西側には大規模太陽光発電(メガソーラー)を設置しているが、大部分が未利用地。中央より南側は2025年大阪・関西万博の開催予定地で、北側にIRの誘致を進めている。


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