街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第1部「進化続ける」(4) 世界を見据える

2020年1月7日

“天下一”の起業家を

関西フューチャーサミットの座談会で官民の代表者らと意見交換する谷井実行委員長(右端)=大阪市中央区

 「関西から世界を変えていこう」−。大阪をはじめ、関西を代表するベンチャー企業の経営者ら300人超が2019年11月、大阪市内に集結。未来について語り合う「関西フューチャーサミット」を初めて開催し、実行委員長の谷井等・シナジーマーケティング会長は冒頭でこう呼び掛けた。

 地方の発展について、東京と対比しながら語るのではなく、最初から世界に働き掛ける視点を重視。関西では、25年大阪・関西万博を頂点に大型イベントが連なる。大規模な都市開発が進むのを踏まえ、「こんなラッキーチャンスはもう一生回ってこない」と強調した。

 催しは、ベンチャー企業有志らの呼び掛けで実現。今後も業界初や業界一といった「おもろい人たち」のネットワーク構築を図る方針だ。世界を動かす経営者の輩出に向け、自ら動く機運が高まっている。

■変化の兆し

 今後の大型イベントや都市開発の舞台となる大阪では近年、長らく言われてきた「地盤沈下」からの変化の兆しが見られる。

 帝国データバンクの調査では、18年に府内に転入した企業数は174社で23年ぶりに170社を超えた。1982年以降、37年連続の転出超過となったものの、その差は最少。近畿経済産業局によると、開業率は近年上昇傾向だ。

 起業家育成の環境づくりについては、官民連携の動きが進む。大阪府や大阪市、経済団体などは2019年10月、「大阪スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」を発足。政府が、世界で活躍する新興企業育成の拠点都市を選ぶのに合わせ、まずは指定されるのを目指す。

 事務局の大阪産業局担当者は「各種団体がばらばらに進めるのではなく、横の連携で展開していく」と意欲を示している。

■トップ目指す

 大阪で成長する企業の中から、世界を意識する動きも芽吹いている。

 駐車場予約アプリ運営「アキッパ」(大阪市)は、約10年後に駐車場市場で世界一となり、40年には時価総額世界一を目指す構想を掲げる。

 今は駐車スペースを貸したい側と借りたい側を、ネット上でつなぐサービスを展開。今後は、場所だけでなく、車を含む移動手段や、燃料となる電気も含めた事業展開を視野に入れる。

 金谷元気社長は「自分たちは困り事解決企業。それならば、自分たちが世界一になれば世界はよりよくなると考えた」と力を込める。

 大阪の起業家団体も活況だ。豊臣秀吉にちなんで「天下一を取る」を掲げる「秀吉会」(同市)は、会員間の競い合いに注力。メンバーの売上高の成長率は年平均40%増という。

 秀吉会や大阪産業局の理事を務めている中野智哉・アイプラグ社長は「今の大阪には、一人一人の視座を高くするためのコミュニティーの活性化が必要。20代や女性、外国人も巻き込みながら互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、成長していく文化を創っていきたい」と先を見据えている。

 (第1部おわり)

ミニクリップ
 スタートアップ・エコシステム 創業から間もない革新性のある企業を継続的に生み出し、成長を加速する仕組み。政府は、世界とわたりあっていけるように、グローバル拠点都市2、3カ所、推進拠点都市数カ所を2020年3月下旬にも選定する。起業家や投資家を呼び込んだり、規制緩和を推進したりと、集中支援を展開する方針だ。


サイト内検索