街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第3部「多様性」(3)外国籍住民と教育

2020年7月26日

地域連携で支援の風土

中学生を対象とした「アニモ」では、生徒一人に対してマンツーマンの指導で学習をフォローする=大阪市西淀川区

 「両辺にマイナスをかけたら、それぞれのマイナスが消えるでしょ」−。大阪市西淀川区の阪神・出来島駅前にある商店街内の一室では、外国籍の生徒一人に対し、スタッフがマンツーマンで学習指導している。両親が南米のペルー出身の男子生徒(13)は、数学の1次方程式と格闘し手元のペンを走らせた。

■町ぐるみで支援

 週1回開かれる中学生対象の学習塾「たぶんかじゅくアニモ」。同じ曜日は小学生対象の学習支援教室「きらきら」と合わせて10人余りが学び、宿題をしたり、習熟度に応じて漢字や計算ドリルをこなす。

 手掛けるのは、日本人と外国人スタッフでつくる任意団体「西淀川インターナショナルコミュニティー」(NIC)。「きらきら」が2016年、「アニモ」は17年に始まった。地元も運営に協力的で、多文化交流会や家庭訪問の実施など、NPOや区役所、商店会に連携の風土がある。

 日常会話とは異なり、日本語の文章では独特の言い回しに戸惑う生徒も多い。元中学校教員の女性スタッフ(71)は「“アサガオ”が花の名前だと結び付くのに、時間がかかることもある。学校教育だけでは限界がある」と指摘する。

■貧困の連鎖

 同市の調査では18年末現在、区人口の4%に当たる約4千人が外国籍で、市内のペルー人の3分の1、ブラジル人の2割が暮らしている。府内最大のイスラム寺院「大阪モスク」もある土地柄だ。阪神工業地帯の一画で、主に派遣会社を通じて食品加工工場などで働く住民が多いと分析している。

 一方、17年にNPOが実施した調査では、区内に住む16〜44歳の外国人65人のうち44%が、最終学歴を「中学校卒」または「高校中退」と回答。本国へ仕送りしている人が半数おり、家計に厳しさもみられる。

 両親が日本語を話せない世帯は、学外の学習がおろそかになりがちで、NIC代表の中村満寿央さん(59)は「教科や日本語の習得が不十分なまま社会に出るため、貧困の連鎖に陥りやすい」と問題提起する。

■自立できる力を

 3歳でペルーから移住した別の男子生徒(14)は、区内の工場で働く両親と妹2人の5人家族。自身は日本語を母語同様に話すが、両親はほとんど話せない。家庭内の公用語は専らスペイン語。日本の高校へ進学する考えで、「将来は通訳として日本で働きたい」と意欲を語る。

 政府は少子高齢化に伴う人手不足から昨年4月、入管難民法を改正。新たな在留資格を新設した。一方、労働条件や差別など課題の改善は急務。中村さんは「ゴールは高校を卒業し、自立する力を付けてもらうこと。若者が社会でドロップアウトしない環境をつくる必要がある」と展望する。

ミニクリップ
 大阪市の外国人住民
 2018年末現在で、大阪市に住む外国人住民は全人口の5・1%に当たる13万7千人。24区別では生野区が最も多く、韓国・朝鮮、中国、ベトナム籍をはじめ2万8千人が暮らす。西淀川区ではペルー、ブラジル籍の住民が市内で最も多く、フィリピン人の人口も3番目に多い。


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