お宝ウオッチング〜文化財をたずねて〜

 守られてきたのには理由(わけ)がある。何十年、何百年、千年の時を超え、今もそこにある文化財は、私たちに歴史の重みとこれからの道を照らしてくれるように感じる。だからこそ、改めて学んでいこうと思う。

高島屋東別館 (大阪市浪速区日本橋)

2020年6月11日

時代を超え新たな価値

ホテルを有する複合施設としてリニューアルした高島屋東別館
大理石をふんだんに使った階段
建築当時の雰囲気が残るエレベーターホール

 昭和初期の百貨店の建築様式が特徴の高島屋東別館(大阪市浪速区日本橋)は今年1月、インバウンド(訪日外国人客)をメインターゲットとしたホテルを有する複合施設として、リニューアルオープンした。昭和から平成、令和へと、時代を超えて受け継がれた建物から、立地する地域に新たな価値を生み出し続けている。

 旧松坂屋大阪店が前身となる東別館は、建物が地上9階、地下3階、延べ床面積約4万1千平方メートルとなる。

◆華やかな意匠

 建物が面する堺筋に沿って11連アーチが連なる。67メートルのショーウインドーは、歩道から一歩引き込んだ位置にガラスが並ぶ。百貨店という「非日常」を味わってもらうため、日常生活から切り離した空間を創出している。

 アーチやアーケードは、アールデコ調の意匠となる。昭和初期に流行したアールデコは、幾何学模様を抽象化してデザインに落とし込む。名古屋を基盤に活躍した建築家が、海外を視察した経験を東別館のデザインに取り込み、歴史様式とアールデコが組み合わさった。

 内部の階段やエレベーターホールは、大理石がふんだんにあしらわれた。葉を表すアカンサスの装飾が随所に施されている。

 かつて市電が通っていた堺筋は、大阪のメインストリートで、建物は通りに沿って軒を連ねていた。都市計画の一環で、御堂筋に主要道路の役割が移ると、建物のすぐ近くに地下鉄が開業するという話題が幻となり、地下鉄駅開設を見越した階段が、建物内に残っている。

◆止まらぬ進化

 リニューアルオープンに向け、シンガポール不動産大手、キャピタルランド子会社のアスコット社が手掛ける滞在型ホテル「シタディーンなんば大阪」を、メインテナントとして誘致した。

 ロビーや客室壁面、石畳を残したエントランスなど、宿泊客が百貨店をイメージする装飾の「デパートメントホテル」を表現した。窓枠に建物の意匠をそのまま生かした客室もある。

 建物内の高島屋史料館は、高島屋創業家の古文書や美術品、百貨店の販促物など約5万点を所蔵する。最新のデジタル技術を取り入れ、子どもから高齢者まで楽しめ、百貨店文化を発信する施設へ進化した。

 ロビーに設置された大画面の「高島屋コレクションボード」は、コレクションを代表する収蔵品700点以上を表示する。気になる作品は画面に触れることで解説が映し出され、来館者は「直観的」に作品を知ることができる。

 同史料館学芸員の田中喜一郎さんは「昔の造りが残るタイムカプセルのような建物」と、東別館の魅力に目を輝かせる。「建築に詳しくない人が見ても楽しい建物。大事にしながら活用していく」と力を込めた。

【高島屋東別館】 2019年に国の有形文化財に登録。1923年に松坂屋大阪店として開店。28〜37年の工事で現在の姿に。68年に高島屋東別館が開設し、高島屋の株式会社設立50周年記念事業の一環として、高島屋史料館が70年に開館した。


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