お宝ウオッチング〜文化財をたずねて〜

 守られてきたのには理由(わけ)がある。何十年、何百年、千年の時を超え、今もそこにある文化財は、私たちに歴史の重みとこれからの道を照らしてくれるように感じる。だからこそ、改めて学んでいこうと思う。

大阪府立中之島図書館(大阪市北区)

2020年11月12日

大阪の“知の源泉”

開館116年を迎えた大阪府立中之島図書館
ステンドグラスがはめられた天蓋ドームが教会のような雰囲気を醸す中央ホール
正面玄関の横にある、創立50周年を記念した歌人・川田順氏の歌碑

 “大(だい)大阪”の名残をとどめる中之島エリア。大阪市中央公会堂と並んで立つのが、大阪府立中之島図書館だ。赤れんががひときわ目を引く公会堂と対照的に、図書館は石造りで古代ギリシャの神殿のような重厚な外観。その風格こそ、大阪の“知の源泉”にふさわしい。

 中央部分と1号書庫からなる本館は、1904(明治37)年に第15代住友吉左衛門の寄付で建てられた。22(大正11)年に再び住友家の寄付により、左右の両翼が増築。本館と両翼2棟は74年に国重要文化財に指定された。

◆知は活力

 コリント式円柱に支えられる正面玄関を見上げると、右から左に「大阪図書館」の文字。建設当時、大阪は東京をしのぐにぎわいを見せていたが、図書館がなかった。そのことを危ぶんだ住友氏が、現在の金額で数十億円相当の建設費と図書購入費を寄付したのだが、改めてその意気に圧倒される。

 本館2階に当たる中央ホールは、天蓋(てんがい)ドームの吹き抜け。中央開口部の幾何学模様のステンドグラスが美しく、階段の手すりに照明があるだけで、頭上から差す自然光が心地いい。

 上部の中間帯(フリーズ)には、菅原道真、孔子、ソクラテス、アリストテレス、シェークスピア、カント、ゲーテ、ダーウィンの八哲の名。左右に伸びた階段上部の壁面には、長崎平和祈念男性裸像で知られる彫刻家の故北村西望氏の2体の彫像がある。右は野性を表した「野神像」、書物を持つ左は知性を表した「文神像」。知は活力を生む−ということか。

◆蔵書60万冊

 階段を上がって中央は「特別室」。日本初の会議室と言われ、当時の政財界や学者がこの部屋に集った。机と椅子も当時のままで、住友氏の肖像画がかかる。

 左右は閲覧室と展示室。外観や内装の格調高さが際立つが、図書館機能はもちろん健在だ。

 蔵書は60万冊で、大阪の古典籍とビジネス関係の書籍が集約されている。特に、2004年からは「ビジネス支援サービス」を開始し、市場動向や企業情報、法令などの情報を網羅する。

 「歴史的な資料を守りながら、周辺の魅力を発信していきたい。子どもたちが郷土愛を育んでくれる場所になれば」と、指定管理者アスウェルの統括責任者林敏文さん。

 中央ホールにある住友氏の銅板碑には「研究活動に資することは、わたしの願いにかなうだけでなく国家をも益する」との意味が記されている。その願いは、開館116年を迎えた今も消えていない。

【大阪府立中之島図書館】 設計は住友家の建築技師長だった野口孫市、日高胖(ゆたか)。館内ガイドツアーは毎週土曜日午前と午後1回ずつ実施。定員5人。当日申し込み。大阪市北区中之島1丁目2の10。


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