お宝ウオッチング〜文化財をたずねて〜

 守られてきたのには理由(わけ)がある。何十年、何百年、千年の時を超え、今もそこにある文化財は、私たちに歴史の重みとこれからの道を照らしてくれるように感じる。だからこそ、改めて学んでいこうと思う。

日本民家集落博物館 (豊中市)

2020年12月10日

重文など全国の民家並ぶ

急勾配の屋根「合掌造り」が特徴の飛騨白川の民家
各家に飾る正月用のしめ縄作りに精を出すボランティアのスタッフ
横一列の間取りが特徴の「日向椎葉の家」。いろりは数日に一度、かやぶき屋根の保存のため火が入る

 豊中市にある服部緑地公園。その一角にあるのが日本民家集落博物館だ。敷地内には日本全国の民家12棟が保存されている。国重要文化財3棟、国重要有形民俗文化財1棟を含め、すべてが指定文化財。気候と密接につながった民家を眺め、時と場所を越えた短い旅を楽しんだ。

◆地域の特徴を家に

 河内布施(現在の東大阪市)にあった名主宅の門をくぐり、目に入るのが日向椎葉の民家(国重要文化財)。日本三大秘境の一つ、宮崎県椎葉村から移築された。もとは山の斜面にあり、即席の架線を引いて材木を搬出するなど、作業は難航したという。

 母屋は平屋で部屋が土間から横一列に並んでいる。急な山あいの斜面に造るために考えられた間取り。江戸後期に建築された民家の典型例だ。茶の間の「うちね」と神楽にも使われる下座敷「でい」の二つにはいろりがある。展示している建物の大半がかやぶき屋根。保存のため、数日に1回、火を入れる。

 坂道を降りると、飛騨白川の民家(国重要有形民俗文化財)がある。1956年、岐阜県からこの地に初めて移築された建物で急勾配屋根「合掌造り」が大きな特徴だ。「人」のように材木を寄りかからせた構造は、地震や風の揺れにも強い。日本ではこの白川郷と五箇山地区にのみ残されている。

 大きい屋根裏では養蚕を行い、最盛期では約156キロを生産していた。また、室内に水槽があり、湧き水を直接家に引いていた。水くみがなく、台所で直接水仕事ができるようにしているのは雪深い地域では必要不可欠だったからだ。

◆貴重な資産を守る

 次に見えたのは摂津能勢の民家(国重要文化財)。当初は取り壊されるところを同館へ寄贈された。調査の結果、江戸初期から中期ころの近畿地区では珍しい構造の建物だと判明した。

 長野県の信濃秋山の民家(国重要文化財)は、外観が目を引く。屋根だけでなく壁もかやぶき。秋山郷は気候が厳しく、土壁にするわらが不足していたことなどからこの様式になった。

 中には土間にむしろなどを直接並べた当時の生活の様子を展示。冬場はいろりで火を常時たき、土間全体を暖める。周囲を2千メートル級の山に囲まれ、雪深い地域で暮らす知恵が見えた。

 入り口近くで数人が縄を編んでいるのを目にした。地元住民らがボランティアで、正月飾りの準備をしていた。今年は新型コロナウイルスの影響で同館も2カ月閉鎖。「再開した際、雑草などで荒れ放題だったところをなんとか見せられるようになった」と笑う。スタッフだけでなく、地域で貴重な資産を守る。



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