来阪catch

勢いと思いで撮った

映画「サニー/32」
監督 白石 和彌
2018年2月17日

少女の暴走と覚醒

「ネット社会だからこんな暴走劇もあり得ると思った」と話す白石和彌監督=大阪市内
左からリリー・フランキー、北原里英、ピエール瀧=(C)2018「サニー/32」製作委員会

 この春アイドルグループNGT48を卒業する北原里英(25)が映画初主演した「サニー/32」(日活配給)が17日から、梅田ブルク7ほかで公開される。11歳で殺人を犯した少女の10年後の出来事を描いた作品で「少女の暴走と覚醒を、勢いと思いで撮った」という白石和彌監督(43)に話を聞いた。

 「ロストパラダイス・イン・トーキョー」(2010年)、「凶暴」(13年)でアウトローたちの衝動を描いた。脚本の高橋泉と3度目のコンビを組んで今作を発表した白石監督は「ヒロインを自ら志願した北原さんに、少女の暴走と覚醒を託して作った」という。

 「凶暴」はタイトル通り、ピエール瀧とリリー・フランキーがあくどい殺人を犯す話でその描写がセンセーショナルな反響を呼んだのも記憶に新しい。「アイドルの北原さんがそれを見て、僕の作品に出たいという話があった。うれしい気持ちと同時に、責任を感じながら僕の世界にどう重ねるかを考えた」

 04年に長崎県佐世保市の小学校で11歳の少女が同級生を殺すという「NEVADA事件」があった。「その映画化を脚本の高橋君とずっと考えていて、あの事件はその後ネットなどで『犯罪史上、最もかわいい殺人犯』と騒がれた。当人は今どうしているだろうと思いながら、それをモチーフに主人公を小学校の教師にして、ストーリーを組み立てていった」

 映画は新潟のある町の中学校で普通の教師をしている藤井赤理(北原)が、知らないおっさんの柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)に誘拐されるところから始まる。2人は彼女に「逢いたかったぜ、サニー」と呼びかける。サニーとは「NEVADA事件」の少女のことで、2人はネットなどで彼女の動向を調べたらしい。

 「ネットで情報が拡散し、顔写真や彼女の周辺事情が知れるようになっている。近年のネット社会はそんな事象を生む。果たして赤理は14年前の殺人者なのか。新潟の海の近くにある小屋を舞台に、2人の男と赤理、そして彼らが発したネット情報で集まる人間たちの葛藤が始まる。瀧さんとフランキーさんは『何が起こるの?』と本気で怖がっていたが、僕は勢いと思いで、ヒロインの暴走と覚醒を追いかけた」

 小屋では2人の男がそれぞれ赤理に好きな衣服を着させたり、髪を切ったり、おいしいものをごちそうしたりするが、彼女は「逃げる機」をうかがうのに必死。「小屋の外は吹雪の海で、逃げ出した赤理と、追う2人の格闘シーンを激寒の中で撮った。男優は僕のことを『鬼だ!』と怒っていたが、北原さんはじっとこらえて頑張ってくれた」

 ほかに門脇麦、駿河太郎、音尾琢真らが共演。新潟の海は白石監督の師匠である故若松孝二監督がよく映画ロケに使った。「そこに師へのオマージュをこめたが、生きていたら『何やってんだ』と怒られかもしれない」と笑う。次回作は東映の大作「孤狼の血」(5月公開)。若松映画の世界を舞台にした個人的映画も撮り終えている。