来阪catch

家族を見つめ直して

映画 「ひとよ」
監督 白石 和彌
2019年11月9日

アート系エンタメ作品に

「家族の話を真正面から描いた」と話す白石和彌監督=大阪市内のホテル
左から佐藤、鈴木、田中、松岡(C)2019「ひとよ」製作委員会

 「凶悪」「孤狼の血」などハードな作品で知られる白石和彌監督(44)が初めて家族のドラマを描いた新作「ひとよ」(日活配給)が大阪のTOHOシネマズ梅田ほかで上映されている。「この機会に家族を見つめ直す作品にしたかった。アート系だが、配役が豪勢でエンタメ映画にもなった」という白石監督に作品の裏話を聞いた。

 故若松孝二監督門下である。「ロストパラダイス・イン・トーキョー」(2010年)で監督デビュー。「若松プロの厳しい映画システムを学んで、好きだった日活の田中登監督(故人)のタッチで撮ったどん底からはい上がる青春映画。大体がアウトローなので2作目が『凶悪』にいくのは流れだった。それが東映の『孤狼の血』につながり、暴力派と言われるようになった」と自らを振り返る。

 一方で「彼女がその名を知らない鳥たち」(17年)で蒼井優に主演女優賞を獲らせアート系分野の作品も平行させている。今年公開の「麻雀放浪記2020」「凪待ち」は前者がエンタメで、後者がアート系ということになろう。「それを経て回ってきたのが『ひとよ』で、劇団KAKUTANIの桑田裕子さんが書いた同名戯曲の映画化。家族を真正面から描くもので、ここでひとつギアを変えて挑戦という気持ちだった」

 東京近郊の田舎町で母親(田中裕子)が3人の子どもたちを守るため暴力夫を殺し、15年の刑を受け出所して家庭に戻って再出発する話。「田中さんがすごい存在感だった。鈴木亮平さんが『西郷どん』の後で少し気が弱い長男、佐藤健さんが斜視に構え都会で働く次男。松岡茉優さんが母親ロスを抱え家にいる長女。豪勢なキャストでアート系の映画を撮らせてもらえたのは有り難かった」

 「ひとよ」は「一夜」という意味と「ひと」を兼ねている。「母は殺人を悔いておらず、それを子どもたちも認めてくれていると思うが、3人もそれぞれ母に対して『言いたいことが言えない』何かを胸に秘めている。その家族の間の葛藤劇に、家族が営むタクシー会社の従業員たちが絡んで、もう一つの人間模様が展開する。筒井真理子さん、佐々木蔵之介さんらにいい味を出してもらった」

 ほかに韓英恵、MEGUMI、浅利陽介、白石一家の音尾※真、そして大悟(千鳥)らが共演。「今年公開は3本目で、ちょっと詰まった感じ。来年は2本撮る予定で、公開は再来年になる。それまで間が空くので、今作をゆっくり味わっていただきたい」

 ※は琢の右のノに点



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