来阪catch

明治の女性のすごさを

映画「一粒の麦 荻野吟子の生涯」
監督 山田 火砂子
2019年12月7日

若い女性に見てほしい

「現代の若い女性に頑張ってという気持ちで映画を作った」と話す山田火砂子監督=大阪市内
「一粒の麦 荻野吟子の生涯」の若村麻由美(左)

 現代プロダクションの新作「一粒の麦 荻野吟子の生涯」(山田火砂子監督)が大阪のテアトル梅田で上映されている。日本最初の公許女医の主人公に若村麻由美が扮(ふん)して好演しており、ベテラン87歳の山田監督は「明治の時代に生きた女性のすごさを描いた。今の若い女性たちに見てほしい」と訴えている。

 現代プロダクションといえば「蟹工船」(1953年)「真昼の暗黒」(56年)などから始まり、「はだしのゲン」(76年)「春男の翔んだ空」(78年)など社会派の名作を数多く発表している老舗。代表で監督も務めた山田典吾氏死後、妻でプロデューサーだった火砂子がこれを継承。70歳で監督業も始め、17年の間で2本のアニメを含め計8本の作品を発表している。

 山田監督は知的障害児教育を実践した石井筆子を描いた「筆子、その愛 天使のピアノ」(2007年)、プロレタリア作家の母を描いた「母 小林多喜二の母の物語」(17年)などを発表。「今回は『筆子−』の時に登場させ描ききれなかった荻野吟子をやりたくて取り組んだ」

 荻野吟子はまだ女性の医者が存在しない明治の時代に、苦学して日本初の公許女医になった人。埼玉県熊谷市出身で同県偉人スリーに数えられている。「昨年、医科大の入試試験で女性受験者が男性と差別されていたことが分かった。あのニュースを聞いて、日本はまだ明治時代かと思った。あの時代の男尊女卑が生きている。調べれば、今の日本の女医の数はOECD加盟国で最下位の32位。荻野吟子に申し訳ないと思う」

 吟子は「女性は勉強しなくてよく、結婚して子どもを産むだけでよい」と言われて、16歳で嫁に出されるが、夫に病気をうつされ離縁される。「その時病院に行き男性医ばかりなのに驚き、また恥ずかしい目にあって、女医になろうと決心する。それに挑戦する吟子の生き方を、現代の若い人たちに見てほしいという気持ちで映画を作った。若村さんが吟子の若い頃から晩年まで熱演してくれたし、後に結婚する夫の役を山本耕史さんが演じてくれて、いい映画になったと思う」

 「女性が少ないのは医者だけではなく、政治家をはじめいろいろ。女性が代われば世の中が変わる」。山田監督はまだまだ元気である。



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