来阪catch

うそのないリアルな芝居で

映画「風の電話」
監督 諏訪 敦彦
2020年1月11日

故郷に帰る少女の姿を

「撮影中にドキュメントかフィクションかと思う時があった」と話す諏訪敦彦監督=大阪市内
「風の電話」のモトーラ世理奈(右)と西島秀俊(C)2020映画「風の電話」製作委員会

 台本のない即興演出で知られる諏訪敦彦監督(59)の新作劇映画「風の電話」(ブロードメディア・スタジオ配給)が24日からなんばパークスシネマで公開される。東日本大震災で被災した少女が8年ぶりに故郷の岩手県大槌町に帰る姿を追ったロードムービーで「うそのないリアルな芝居で描いた」という諏訪監督に話を聞いた。

 「風の電話」は岩手県大槌町に住むガーデンデザイナーの佐々木格さんが自宅の庭に設置したもので「死別した人と話ができる」と言われて、被災者やその遺族が訪れるという人気スポット。「震災から8年が過ぎたがその間にスルーしてしまったものが多いことに気づかされる。その時間の経過をフィクションで描くことで映画が成立すると思った」

 台本のない即興演出で知られる諏訪演出はドキュメンタリータッチの作品が多く、フランスの名優、ジャン=ピエール・レオ主演で撮った「ライオンは今夜死ぬ」(2017年)が印象に新しい。「テレビで『風の電話』のドキュメントを見て、最初これを劇映画にするのは難しいと思ったが、電話をする被災者は誰にも見られていないからそこで話をする。その世界ならフィクションでもやれるのではないかと思った」

 両親と弟など家族を津波で失い、広島の叔母の家に身を寄せていた少女ハル(モトーラ世理奈)が、8年ぶりに故郷の大槌町に戻ることになり、旅の途中でいろんな人たちと出会う。「僕の映画で組んだことがある三浦友和さん、西島秀俊さん、渡辺真起子さん、そして今回初めての西田敏行さん、山本未來さんらに、少女ハルと出会う人たちを即興で演じてもらった。それに反応して、ハルの目がだんだん輝き始める」

 ハルのモトーラはモデル出身で芝居経験はまだ少ない21歳の新人。「芝居とセリフを彼女の感性に任せた。彼女には自分だけの時間が流れているので、ハルという少女になりきって、思うように動いてもらった。故郷に着いて、津波にさらわれた家の跡地に立ち、彼女がする行動を見てほしい。それはラストで風の電話に着いて、両親と電話するシーンにつながり、何よりも美しい言葉が聞けると思う」

 「苦悩を抱えながら現実と闘って、それを体現する三浦さん、西島さんの芝居がリアルで良かった。福島出身の西田さんは『新相馬節』を歌ってくださった。そしてハルを演じたモトーラのラストの顔に明日を信じることを託しました」



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