来阪catch

映画的スケール感に包んで

映画「劇場」
監督 行定 勲
2020年4月11日

又吉原作の空気感を

「原作を読んですぐ自分のことと重ね身につまされた」と話す行定勲監督=大阪市内のホテル
山崎賢人(左)と松岡茉優(C)2020「劇場」製作委員会

 「花火」で芥川賞を受賞した又吉直樹の同名小説を映画化した「劇場」(松竹/アニプレックス配給、近日公開予定)。売れない演劇青年と恋人の出会いと別れを描いた作品で「原作にある切ない青春の吹きだまりの空気感を、映画的スケールに包んで描いた」とメガホンを取った行定勲監督(51)は自信ありの表情である。

 東京下町の小演劇界で生きようとする青年・永田(山崎賢人)と、そこで出会った純な女性・沙希(松岡茉優)の出会いと別れを描いたラブストーリー。「原作を読んで身につまされた。主人公たちの青春の吹きだまりに、どうしようもなく共感し、その空気感を映画化したいと思った」

 大ヒット映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」(2004年)や「ナラタージュ」(17年)などで知られる行定監督は演劇部門にも進出し千田是也賞を受賞するなどの才人。「演劇で生きようとする青年の心情がとてもよく分かり、それで成功するためと、愛する女性を幸せにするために頑張ろうとすることがかみ合わず、その谷間に落ち込んでゆく姿がいとおしい。二枚目の山崎くんが、泥だらけになって自分をさらけ出す姿を純度高く演じてくれた」

 売れない演劇青年の永田が都会の街で、田舎から来て女優になる夢を持っている沙希と知り合い、同居生活を始める。「髪がボサボサでヒゲ面の山崎くん。そして田舎のにおいを残した少女っぽい松岡くん。又吉原作はもちろん、永田は大阪出身なので、標準語になれているものの時おり大阪弁が出てくる。それがおかしく大阪弁をまねする沙希とのやりとりがある。2人の空気感もばっちりで、それが次第にすれ違っていくところが見どころになっている」

 永田は芝居の台本書きに行き詰まり、面倒見のいい沙希についつい文句を言う。「そこに距離感が生まれ、次第に隙間風が通う。脚本は演劇畑の蓬莱竜太さんなので微妙な表現が生きている。ラストは映画的なスケールに包んで見せる仕掛けを用意している」。寛一郎、伊藤沙莉、井口理、浅香航大らが共演。行定監督の泣かせる青春恋愛映画の傑作に仕上がっている。



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