来阪catch

引退する日迎えて

ドキュメンタリー映画「精神0」 
監督 想田 和弘
2020年5月2日

夫を支えた妻との日々

「山本先生のそばに奥さんの芳子さんがいることにあらためて気付いた」という想田和弘監督
山本昌知先生(左)と奥さんの芳子さん(C)2020 Laboratory X,Inc

 観察映画の想田和弘監督(49)が岡山県に住む精神科医が地元の人々の「こころの病」を癒やす診療の日々を記録した「精神」(2008年)の続編にあたる新作「精神0」(東風配給)が5月2日から「仮設の映画館」(デジタルネット配信)で公開される。「82歳の老医師、山本昌知さんが引退する日を迎え、彼を支えた妻と今後どう生きるか」を考える時間を追いかけたという。

 新型コロナウイルス禍で世界中が深刻化する中で、文化的エンターテインメントの世界も例外ではない。5月2日から大阪の第七芸術劇場ほかで公開予定だった「精神0」も上映のめどが立っていないが、想田監督は配給会社と相談しデジタルネット配信で同じ2日から公開することを決めた。「従来のネット配信ではなく、公開劇場と組んだ収益配分になる仕組みで、これは画期的なことだと思う」

 このインタビューはパソコン通信のスカイプ取材で、距離は東京と大阪と離れているが映像で面と向き合って話ができる。「僕は普段はニューヨーク在住なので通信取材はよくやっているし、コロナ禍でこれからも増えると思う。それにしても映画を作る人も映画館も大変で、知恵を出し合ってみんなで協力して上映活動を考えなければならない。こんな時だから、精神科医の山本先生のような人が必要なような気がする」

 山本医師のモットーは「病気ではなく人を看(み)る」。「とにかく、先生は患者さんの話を聞く。そしてこうしろ、ああしろではなく、どうしたらいいか自分で考えさせる。患者さんにとって相談相手でもあるが、その先生が引退すると発表したので多くの患者さんが驚き、困惑している。それを聞いて10年ぶりに先生の病院を訪れ、先生と患者さんに再びカメラを向けた」

 変わらず、優しい口調で患者の話に耳を傾けている。「以前と違っているのは、そばにいる奥さんの芳子さんの姿。これまでも内助の功の奥さんだったが、どこか控えめで、口数も少ない。僕のカメラは先生、患者さんから自然に芳子さんの方をフォローアップする。今回は奥さんと先生の純愛物語になるのではないか。編集の時そんな予感がした」

 岡山県は想田監督の奥さんでプロデューサーでもある柏木規与子さんの故郷。「想田観察映画で今回が一番、彼の視線に思いがこもった作品になった」。観察映画第9弾。今年のベルリン国際映画祭でエキュメニカル審査員賞を受賞した優しい作品である。



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