大人の社会見学

 大人にしか味わえない、大人だからこそ学びたい施設を行く−。それを「大人の社会見学」と呼ぶ。食品工場や伝統産業資料室、工業遺産など関西有数のスポットを写真に収めながら、地域との密着や歴史、魅力を取り上げていく。

コンペイトウミュージアム (大阪府八尾市)

2019年12月19日

南蛮由来の歴史とロマン

八尾市の工業団地内にある「コンペイトウミュージアム」
グラニュー糖の四角い粒が1日当たり1ミリずつ大きくなり、2週間かけて1・5センチ大の製品に仕上がっていく
直径1・8メートル、重量800キロの大釜。蜜がまんべんなく広がるよう職人が鍬(すき)を使って手作業していく

 かつては高貴な身分の人しか口にすることができないとされた「金平糖(こんぺいとう)」。大阪にその歴史と文化を学べる博物館がある。その名も「コンペイトウミュージアム」。ポルトガルの宣教師、ルイス・フロイスが織田信長に献上したとも伝わる南蛮由来の菓子は、日本に渡って独自の進化を遂げた。近代になってもさらなる改良を繰り返し、その歴史とロマンが詰まったミュージアムを訪ねた。

 大阪メトロ八尾南駅から歩いて3分ほど。甘い香りが漂ってくる大阪菓子工業団地の一角に、オレンジ一色のハイカラな建物が目に入ってくる。企業団地内としては異質の存在感だ。

◇ユニークでオリジナル

 出迎えてくれたのは3代目に当たる野村しおり社長。コンペイトーがポルトガルから日本へもたらされたという故事にちなみ、山高帽をかぶった「南蛮人」をイメージした衣装でもてなしてくれる。

 南蛮由来の砂糖菓子は鎖国を経て、江戸時代に「日本人の美的センス」(野村社長)が加わり、ツノが生えるという独自の進化を遂げていった。

 その工程を知ってもらおうと、2003年にオープンしたのが同施設。「ユニークでオリジナル」をモットーとし、商品は高級ワインやマツタケをモチーフにしたものや、「珈琲(こーひー)コンペイ」「世界一小っちゃなコンペイトウ」など何百種類を世に送り出している。

◇光る職人技

 製造工場では、1ミリ程度のグラニュー糖の粒を1日当たり1ミリずつ大きくしていく過程を学ぶことができる。型にはめ込むのではなく、直径1・8メートルある鉄製の大釜に砂糖を投入し、時間をかけて「蜜かけ」と「乾燥」という工程を繰り返していく作業だ。

 丸くなった粒に“ツノ”が生えていく一連の工程は、あくまでも職人の目利きによるもの。バーナーで熱した大釜を30〜40度に傾け、一定の周期で回転させる。火力や糖液量に応じて生まれるつやは職人の技術のたまものだという。

◇インバウンドも

 予約制で製造体験も楽しめるとあって、学校関係はもちろん、福祉団体やPTA、婦人会にも人気を集めている。活況にあるインバウンド(訪日外国人観光客)も念頭に置き、今年2月に入社したベラルーシ出身の女性スタッフが外国語対応に当たるほか、留学生の職場体験(インターンシップ)も積極的に受け入れている。

 「お客さんの反応が直接届くのは職人にとって良いこと」と話す野村社長。PRに向け、「コンペイトーの歴史と文化を広く感じてもらいたい」と展望する。

【コンペイトウミュージアム・大阪糖菓】 ミュージアムは八尾市、堺市堺区、福岡市の3館で、八尾、堺は2003年、福岡は12年に開設。工場見学や手作り体験ができ、年間に3館計1万7千人が来館している。運営は1940年に菓子の卸問屋として創業した「大阪糖菓」(本社・八尾市)で、年間で約120トンを出荷。70年代には、全国菓子博覧会で「大納言糖」が総理大臣賞、「金平糖」が厚生大臣賞を受賞した。近年では砂糖を配合した石けんやリップクリームなども手掛けている。


サイト内検索