共創(ともにつくる)

 世界が新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)される中、既存の枠組みを乗り越えようとする姿が見られる。2025年大阪・関西万博のコンセプトに掲げられる未来社会の「共創」を、どう実践していくのかが問われている状況にある。それぞれの分野で道を切り開こうとする人たちの姿を、1年かけて追う。第1部は、急速に進展するオンライン時代の課題や打開策に迫った。

第1部 オンライン時代(1) 「リモートワーク」

2021年1月4日

「在宅」で生産性1.4倍に 訪問介護常勤事務

「3密」対策で導入した研修動画の一場面=松原市

 訪問介護事業を手掛ける「SCC大阪」(松原市)は20年4月、新型コロナウイルス対策で「3密」を避けるため、事務所への入室を制限した。

 最低限の事務職員以外は原則在宅勤務にしたところ、常勤事務職員の1時間当たりの生産性は、新型コロナ禍前の19年10〜12月に対し、20年6〜8月は約1・4倍に向上。事務作業の時間を短縮しながら、売り上げを伸ばした。要となったのは情報通信技術(ICT)の活用方法だった。

■伝達漏れ「激減」

 管理者の芝谷知子さんは在宅勤務の導入時、「あまり心配はなかった」と振り返る。

 同社は17年からビジネス用チャットを導入。訪問介護の利用者ごとに、担当者らがチャットのグループを作って運営した。メールよりも、過去の情報を確認しやすかったりと「事務所外でも適宜情報を共有でき、物探しや伝達漏れが激減」(芝谷さん)。訪問介護員は、すでに直行直帰でも働けるようにしていた。

 常勤職員向けにも、業務の状況を把握するグループチャットを運営する手法で対応。別の「3密」対策では、介護サービスの研修を動画とチャットを組み合わせて展開した。

 五島広文社長は「IT化に否定的な介護職員にも、便利なツールとして取り組んでもらえるよう丁寧に説明してきた」と導入のポイントを示す。

■「雑談」も大事

 SCC大阪が導入したビジネス用チャットを運営する「チャットワーク」(大阪市北区)は、新型コロナ禍に合わせ、社内外でオンライン上のやりとりを徹底してきた。

 同社で、事業者向けに活用方法を提案している大河内唱平さんは「現状の問題点を洗い出し、目的を決めてからツールを使うのが重要」と指摘する。

 チームごとの情報共有は、メールより効率的だからとチャットに切り替えたり、評価の話は表情の見えるビデオ通話にしたりといった具合だ。

 一方で「雑談用のグループチャットを作って」と大河内さん。出社中に何げない会話から新たなアイデアが生まれるケースがあるため。「業務の効率化」と「価値を創出する機会」のバランスを重視する。

 オンライン化の推進を巡り、「考えすぎず、まずは触ってほしい。動くと見えてくることがある」と大河内さん。労使一体で新たな働き方を創っていくため、最初の一歩を踏み出す時が来ている。

ミニクリップ
 在宅勤務の壁 在宅勤務を巡り、東京商工リサーチが近畿2府4件の企業を対象にした11月の調査では、新型コロナウイルス禍以降、「一度も実施していない」「実施したが、現在は取りやめた」理由について千社余りが回答(複数回答)し、「業務がリモートワークに適していない」が84%で最多。一方で「生産効率に支障が生じる」が27%、「労務管理が困難になる」が16%と、工夫次第で対応できる内容も一定割合を占めた。


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