共創(ともにつくる)

 世界が新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)される中、既存の枠組みを乗り越えようとする姿が見られる。2025年大阪・関西万博のコンセプトに掲げられる未来社会の「共創」を、どう実践していくのかが問われている状況にある。それぞれの分野で道を切り開こうとする人たちの姿を、1年かけて追う。第1部は、急速に進展するオンライン時代の課題や打開策に迫った。

第1部 オンライン時代(2) 「教育の現場」

2021年1月5日

メリット デメリット併存 最適解を探る状況

オンライン環境を活用した介護実習授業を受ける淀商業高の生徒=2020年12月24日、大阪市西淀川区

 「クリスマスにちなんだクイズをします」−。2020年12月24日、大阪市西淀川区にある淀商業高の教室で明るい声が響いた。声の主は同校福祉ボランティア科の1年生。介護実習の一環で、同市内の老人福祉施設とのクリスマスパーティーを催している。

 声の先にお年寄りの姿はなく、スマートフォンと集音マイクが置かれている。約30分のパーティーは、演奏など盛りだくさん。新玉彩恋さん(15)は「お年寄りのうれしそうな反応がうれしい」と笑顔を見せる。「コロナが収まり、直接お会いできた際には経験が役立つ」と、前向きの言葉で振り返った。

■ネットならでは

 同校では国家資格取得のため、介護施設に直接出向き、現場での実習を行っている。しかし、20年は新型コロナウイルスの影響で、リモートによる授業に切り替えた。新玉さんは「一度もお年寄りと会話しないままかと不安だったので、画面越しでも交流できてよかった」と声を弾ませた。

 1年生のリモート実習は3度目。指導する辻本智加子教諭は「これまでは実習先の状況を知ることはなかった。ネット越しだからこそのメリットが見えた」。過去2度の授業を通し、生徒個々に具体的なアドバイスができた。

 しかし、介護では現場での体験が重要な要素になる。辻本教諭は「寝たきりの人の姿勢を変えるなど、生徒同士と実際にお年寄り相手にやるのとでは全く違う。技術面では限界がある」。今後はギャップをどう埋めるかが課題という。

■まだ過渡期

 コロナ禍で大阪府は20年6月、計159の府立高校、府立支援学校でオンライン授業の整備を完了させた。テレビ会議システムを活用した双方向授業や動画配信などができる。

 しかし、大手前高(大阪市中央区)ではネットでの双方向授業は行っていない。生徒側のハード面での課題もあるが、生徒、保護者ともに対面授業への要望も強いからだ。現在は保護者説明会を、配信形式で行うなど使用は限定的。松田正也校長は「高校でのオンラインの活用は、まだまだ過渡期」と見ている。

 一方、先んじて双方向授業を実施しているのが大学だ。近畿大(東大阪市)では、学生らに一人5万円を支給し、ハード面の整備費用を補助。20年は座学の多くをオンラインにせざるを得ず、今も授業動画を配信、視聴可能にするなどオンデマンド化を進めている。

 担当の江口充副学長は「出席率が向上したり、質問が多くなるなどメリットはあった」。それでも来年度は対面式を基本にカリキュラムを組む。「語学や実験、小規模なゼミなどは直接会話した方が効果が高い」。今後はネットと対面を併用しながら、最適な方法を模索していくことにしている。

ミニクリップ
 大阪府の教育体制整備 新型コロナウイルス感染拡大を受け、府教育庁は2020年5月、府立高でオンライン授業実施の体制整備を決定。事業者に通信機器の提供募集も行った。6月に整備が完了し、7月にはデモンストレーションを実施。臨時休業時の授業だけでなく、不登校や長期入院中の生徒の学習支援にも活用する考え。


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