共創(ともにつくる)

 世界が新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)される中、既存の枠組みを乗り越えようとする姿が見られる。2025年大阪・関西万博のコンセプトに掲げられる未来社会の「共創」を、どう実践していくのかが問われている状況にある。それぞれの分野で道を切り開こうとする人たちの姿を、1年かけて追う。第1部は、急速に進展するオンライン時代の課題や打開策に迫った。

第1部 オンライン時代(3) 「高齢者とIT」

2021年1月6日

誰かの役に立ちたい 学習通じ社会参加

府高齢者大学校の講座でパソコンを操作する高齢者ら=大阪市天王寺区

 「シフトキーを押しながらドラッグしてみましょう」−。暮れも押し迫った平日の朝、大阪市内の会館で講師が指導するのは、ノートパソコンを使った写真データの編集作業。同市中央区の大阪府高齢者大学校が開設する「IT・デジタルフォトアート科」の授業で、マウスを動かす受講生は平均年齢70歳だ。

 同校は、2009年度にシニアらが中心となってNPO法人を立ち上げ、学習や体験を通じて社会参加と生きがいづくりを実践し、社会の広い分野で貢献しようと開設した高齢者のための学校。20年度は2875人の受講生を迎え、歴史や美術・芸術、語学交流など多彩な分野で学びを深めている。

■利用者は増加

 さまざまな講座の中でも、パソコンはスタート当初から定員割れがない人気の分野。20年度は新型コロナウイルスの影響でシーズン前半は休校に追い込まれたが、9月から初級やオフィス専攻、ウェブデザインなど5科目が開講している。

 総務省の「令和元年通信利用動向調査」によると、19年のインターネット利用者割合は89・8%で、前年比で10ポイント増。60歳以上の年齢層で10ポイント以上伸びており、80歳以上では36ポイント増の57・5%だった。

 スマートフォンの普及が進み、インターネットの端末別利用状況(個人)は「スマートフォン」が63・3%で最も高く、「パソコン」を12・9ポイント上回った。ただ70歳以上では依然、パソコンの使用割合が最も高かった。

 府高齢者大学校「IT・デジタルフォトアート科」では、デジタルカメラの基本操作などを学び、パソコンで写真の整理や加工、作品づくりを行う。

 受講生の多くが職場などでパソコンの使用経験があり、基本操作はスムーズ。年末最後の授業は、オフィス系ソフトを使ったアルバム作成で、孫へのプレゼントや友人へのメッセージカード作りに熱中した。

■日常に生かす

 同校でパソコン関連の科目を受講し、3年目となる同市天王寺区の繁田順子さん(68)は「せっかく教わっても、使わなければすぐ忘れる。必要となる仕事があるわけでもないので、日常の中で生かせることを見つけたい」と話す。

 池田市の津川順司さん(72)は、仕事でパソコンを使った文章作成や表計算の経験はあったが、写真加工は初体験。目標はオリジナルカレンダーの作製で、「誰かの役に立ちたいというのが一番。カタカナの専門用語を覚えるも、いい認知症予防になる」と笑った。高齢者にも急速に浸透していくIT技術。進化の度合いは速くても、新しい生き方を支える力につながっている。

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 アクティブシニア
 豊富な知恵やノウハウを持って、定年退職後なども活発に活動する高齢者。25年には65歳以上の高齢者人口割合が30%を超える見込みで、貴重な人材として注目を集めている。大阪府では毎月15日を「アクティブシニアの日」と制定、知事から「シルバーアドバイザー」の認定証を交付するなど、高齢者の「第二の活躍」を支援している。


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