共創(ともにつくる)

 新型コロナウイルス禍にある今の社会において、各分野で道を切り開こうとしている人たちの姿を追う年間企画「共創〜ともにつくる〜」。第2部は新年度が動き始めた中で、悩みや葛藤を抱えながらも新しいことに挑み、課題を乗り越えようとしている人たちを取り上げる。

第2部 息吹(上) 「衣料品の廃棄問題」

2021年5月2日

新たな価値リメーク 産学コラボ芽吹く文化

大阪モード学園の学生による優れたコーディネートを表彰した福屋社長(左端)ら=大阪市北区

 「その服は私たちの血でできている」−。ファッション専門学校「大阪モード学園」(大阪市北区)で学ぶ岡崎美怜奈さん(20)は、発展途上国で縫製に従事する女性の訴えに衝撃を受けた。

 同学園が、学生に社会問題について考えてもらおうと、衣料品廃棄課題に取り組む「ウィファブリック」(同市西区)と連携して実施した講義の一場面。発展途上国の人たちが、劣悪な環境で働く映像が冒頭に流された。

 視聴を機に、安い労働力で衣料品が作られ、安易に捨てられるこの問題について考えるようになった岡崎さん。講義を受けた学生とともに、大手衣料品メーカーの試作品の洋服でコーディネートを考え、ウィファブリックのインターネットサイトで丸ごと販売するプロジェクトに臨んだ。

 前年度末、公開されると即日完売。衣服に新たな付加価値が生まれるのを実感した。同社から、優れたコーディネートを考案したと表彰され、「リメークで服をさらに生かせるのでは」と思いを強くした。

■自分事になった

 共同でプロジェクトを手掛けたウィファブリックは、衣料品業界で余剰在庫を販売したい業者と、購入したい人をつなぐサイト「スマセル」を運営。新型コロナウイルス禍で流通量が急増した。

 再流通によって焼却を免れ、削減された二酸化炭素排出量をサイト上で数値化する仕組みを考案し、環境面からも循環型社会の重要性を打ち出している。

 大阪モード学園の講義で登壇した福屋剛社長(39)が、同社を設立したのは2015年。繊維業界も担当していた前職の商社時代、テレビ番組をきっかけに、衣服業界では世界で年間200億着余りが廃棄される問題を知った。

 処分品の表にチェックを入れていた自身の行為。その行き着く先まで想像できるようになった時、「自分事となり、起業に至った」。

■連携の輪広げる

 同学園との連携は、旧知の間柄だった河野浩二さん(45)が、就職指導室で勤めていたのが縁となり実現。本年度は、学生によるリメーク商品の製作を企画した。値付けも学生が行い、どれだけ付加価値を生み出せるのか挑む。

 河野さんは「日々の学びから、社会問題を解決する一手の可能性を感じてほしい」と思いを込め、持続可能な社会づくりをキーワードにした学生ブランドの展開を視野に入れる。

 福屋社長にとっても新たな挑戦の第一歩。付加価値を高める取り組みの意義を踏まえ、「これからいろいろな企業とコラボしていきたい」と抱負を語る。かつては紡績産業を中心に商工業が発展した大阪で、衣服を巡る新たな文化が芽吹いている。

ミニクリップ
 大阪の紡績産業
 大阪は綿の産地だったため、明治期には各地で紡績会社が設立された。紡績業を中心に商工業が発展。産業革命期に綿工業で繁栄した英国・マンチェスターになぞらえ、「東洋のマンチェスター」と呼ばれる時期があった。


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