共創(ともにつくる)

 新型コロナウイルス禍にある今の社会において、各分野で道を切り開こうとしている人たちの姿を追う年間企画「共創〜ともにつくる〜」。第2部は新年度が動き始めた中で、悩みや葛藤を抱えながらも新しいことに挑み、課題を乗り越えようとしている人たちを取り上げる。

第2部 息吹(下) 「教壇での一歩」

2021年5月4日

理想の教師像描き前進 三者三様逆境糧に

それぞれに生徒に伝えたい思いを抱き、夢を膨らませる堀之内さん、小松さん(中央)、麓川さんの3人(上から時計回り)=コラージュ

 大阪市西淀川区の好文学園女子高校(延原観司校長)に今春、数学担当の堀之内愛さん(22)、生物・化学担当の麓川澪さん(23)、体育担当の小松未来さん(22)の3人が、教師として教壇での一歩を踏み出した。昨年、学生生活最後の1年を新型コロナウイルスにほんろうされた3人。新たなスタートに不安を抱えつつも、「生徒との交流は楽しい」と新生活に笑顔を見せる。

■コロナ禍の1年

 教室で堀之内さんがホワイトボードに数式を書き込む。「分子と分母で同じ文字を消せるのは、かけ算になっている場合だけ」。時折、生徒の方を向きながら、分数式の法則を分かりやすく説明していく。

 大学で専攻していたのは代数学。昨年は新型コロナ禍で学業の集大成となるゼミの大半は、リモートだった。教育実習も例年6月にあるのが10月にずれ込み、採用試験と重なるなど慌ただしかった。「正直、教員としての準備不足ではないかと不安」と心中を語る。

 地方の公立大で生物学を学んでいた麓川さん。出身地の大阪で教員になる夢を持ち、試験で来阪した10月、大学の寮に帰ると2週間待機となった。さまざまな日程が遅れ、年明け以降も卒業論文の実験に追われる日々だった。

 教師としてスタートして1カ月。地元に帰り、高校時代の旧友から会食の誘いもあるが、すべて断っている。「親御さんから大切なお子さんを預かっている。もし、コロナに感染させたら顔向けができない」と慎重な姿勢を崩さない。

■経験を伝える

 「小さな頃から体を動かすことが好きだった」と話すのは小松さん。高校時代に出会った恩師の影響で、教師の道に進んだ。今は授業のほか、バレー部の顧問も務める。

 学生時代の10年間、陸上競技を専攻。高校3年の最後の大会をけがで欠場し、「完全燃焼したい」と大学でも陸上部に所属した。昨年、新型コロナ禍で大会がなくなる中、気持ちを保ち、11月まで競技を続けた。

 昨年は高校も多くの公式戦が中止となった。今年も同様の可能性はあるが「生徒たちには、高校で終わりじゃない。どのような形でも道は続けられることも知ってもらいたい」と望む。

 理想の教師像を、「きちっと理論が決まる数学の面白さを伝えたい」と堀之内さん。麓川さんは「生徒に寄り添い、成長を感じられるようになりたい」。小松さんは「スポーツの楽しさを伝えるのは一番。その中で厳しくすべき時は毅然(きぜん)とする」と、それぞれ描く。

 科目も経緯も思いも三者三様。それでも全員、生徒に教える姿は希望と明るさに満ちていた。

ミニクリップ
 好文学園女子高校 1937年、大阪商科女学校として大阪市福島区に創立。44年に大阪福島女子商業学校、60年に大阪福島女子高校と改称する。2008年に現在の校名になり、現在に至る。特別進学コースのほか、マンガ・アニメーションコース、メディアクリエイターコースなどがある。弓道部が全国高校総体で優勝するなど部活動も盛ん。


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