トレンド特急便

産官学が“アトツギ”育成

2019年11月20日

事業コンペ開催、若手挑戦

前回大会に出場したアトツギら(大阪産業局提供)
熱心に議論するアトツギら =2018年8月、大阪市北区

 中小企業経営者の後継ぎが集まり、先代から受け継ぐ有形無形の経営資源を生かしたビジネスプランコンペを産官学で手掛けるケースが目立っている。企業の「後継者不足」が深刻化する中、後継者支援とベンチャーマインドの育成が狙いだ。大阪府市でつくる大阪産業局では、12月に最終発表会が開かれる「アトツギピッチ」を運営。経営のバトンを預かる34歳未満の“ホープ”が出場し、「若手の挑戦に注目してほしい」とPRしている。

■大阪産業局が関与

 アトツギピッチは、府などが支援機関と連携する「府事業承継ネットワーク」の取り組みの一環。書類選考を経て、登壇するのは土木や漬物、物流などに従事する11人。本戦に向け、16日には先輩経営者による育成指導もあり、“アトツギ”同士による意見交換を通じて発想力を鍛えるなどプランの精度を上げている。

 優勝者は、来年2月に開かれる別のコンテストへの出場権と、事業の具現化に向けて先輩経営者から助言を受けられる権利を得ることになっている。

 企画を運営する大阪産業局の担当者は「若い感性や視点を生かした斬新なアイデアが出そろった。情報収集はもちろん、経営の刺激にもなるのではないか」と観覧を呼び掛けている。

■南海電鉄も支援

 少子高齢化を背景に沿線住民の減少が懸念される中、地域活性化を図ろうと取り組むのが南海電鉄(大阪市浪速区)。乗客数を左右する沿線の企業を盛り上げようというものだ。

 2017年度から手掛ける「南海沿線アトツギソン」には34歳未満が集まり、3日間かけてビジネス計画の開発や発表を実施。参加を機に、継続的に新規事業の創出を図るケースも出ている。3年目の今回は8〜9月にかけてあり、南海の幹部は「沿線の活性化には元気で若い経営者が必要だ」と期待を寄せた。

 大阪産業局でも、大学などと連携し、グループ別にアイデアを競う「アトツギソン」を年に複数回開催。参加者からは「リソース(家業)を生かすこと自体を大事にしてしまい、顧客不在のアイデアが組み上がってしまう恐ろしさを体感できた」といった声も挙がっている。

■650万人の雇用消失

 中小企業は地域の経済や雇用を支える半面、近年は後継者が見つからないことから、事業が黒字であっても廃業を選択するケースが多いとみられている。経済産業省の試算では、「後継者問題」が解決しない場合、25年頃までに最大約650万人の雇用と約22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性を指摘する。

 帝国データバンクが発表した「全国・後継者不在企業動向調査」によると、19年の「後継者不在率」は65・2%。近年はやや改善傾向にあるものの、「事業承継時期に差し掛かる年代の数値が依然高位に留まっている」と課題を提起している。

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 アトツギピッチは12月1日、大阪市北区の大阪イノベーションハブで開かれる。一般の観覧も可能。ウェブサイトから事前に申し込める。



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