トレンド特急便

本を間に出会いの場 日替わり店長とおしゃべりも

2020年2月5日

NPO運営の「本間にブックカフェ」 西成・釜ケ崎

「本間にブックカフェ」で談笑する日替わり店長の「老い」さん(左手前)と「消しゴム」さん(同奥)、ココルーム代表の上田さん
壁の両側に5千冊以上の本が並ぶ部屋

 NPO法人「こえとことばとこころの部屋(ココルーム)」が運営する「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」(大阪市西成区太子2丁目)で、日替わりの店長とおしゃべりをして本をもらうことができる「本間にブックカフェ」がオープンしている。本を間に出会いが広がり、居心地のいい空間を提供する独自の取り組みだ。

 「読まれない本はひとりぼっちで待っています 一人の手に取られるのを もう一人の手に渡るのを あと何人もの心に届くのを 文句も言わずに待っています」

 年代物のカウンターの向こうに本棚があり、詩人の谷川俊太郎氏がカフェに贈った詩が飾られている。本棚には谷川氏の著作のほか、中沢新一著「アースダイバー」、打越正行著「ヤンキーと地元」などの単行本とともに谷川氏のスヌーピーの漫画がずらり。

 カフェスペースの向こうにも部屋があり、アート、小説、ノンフィクションとさまざまなジャンルの本が5千冊以上並ぶ。床には丸いちゃぶ台と座布団が置かれた不思議な空間で、もらえない本もあるが、自分でほしい本を選んでもよい。

 カフェがあるのは、日雇い労働者の街から労働者の高齢化で福祉の街へと変貌し、安い宿を求めて外国人観光客が集まる通称・釜ケ崎(あいりん地区)。

 困窮している人も来店するため、余裕があればもう一人分のコーヒーを購入する「恩送りコーヒー」(440円)という仕組みを設けており、来店した大学生たちが何人分も出し合ったことも。

 日替わり店長の一人、「消しゴム」さんは長身細身の64歳。印象に残っているのは静かにコーヒーを飲んでいたお客さんが言った「いい時間をありがとう」という言葉で、「黙っていることが大事なこともある」と気付いた。「活字離れと言われる中高生に字を読んでほしい」と話す。

 「新潟から家出してきた」と笑うもう一人の店長は、72歳の元住職「老い」さん。「基本的に聞き役」という姿勢だが、店の外に出ての呼び込みも考えている。柔和な笑顔で「喜んでもらえたらうれしい」と手持ちの本を持参してきた。

 開店時間は午前10時から午後9時まで。日替わり店長と会話するもよし、しないもよし。本を選んでもらうもよし、もらわなくてもよし。建物の奥の井戸のある庭で過ごすこともできる。

 ココルーム代表の上田假奈代さんは「人の出会いの場所。日替わり店長とおしゃべりして本をもらって」と来店を呼び掛けるとともに、日替わり店長や本の寄付も募っている。



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