トレンド特急便

「たんす預金専用」を商品化

2020年7月22日

創業101年、「初音の家具」手掛ける 桐たんすの田中家具製作所

「大切な物はしっかり安心、安全に守って」。たんす預金専用の桐たんすを紹介する田中社長
商品は現役の伝統工芸士が全工程を手作業で作る

 良質な国産の桐(きり)だけを使い、重厚で上品な姿から「桐たんすの最高峰」とたたえられる大阪泉州桐たんす。その代表的ブランド「初音の家具」を手掛ける田中家具製作所(岸和田市、田中由紀彦社長)は、伝統技法で仕上げた「たんす預金専用の桐たんす」を商品化した。現代の生活スタイルにも違和感なく溶け込むデザインと、江戸時代から伝わるからくり細工を施した逸品。田中社長は「大切な物、思い出の品はしっかりした箱に入れると安心です」とアピールする。

 江戸時代に技術が確立し、着物を収納する桐たんすは嫁入り道具の代名詞だったが、それも今は昔。住宅事情や生活様式の変化から出荷数は減少の一途をたどる。そこに今年は新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。

■老舗の危機感

 「このままでは、桐たんすの文化が途絶えてしまう」−。売り上げは前年比7割減。現役伝統工芸士5人を抱え、創業101年の老舗を背負う田中社長の危機感は日に日に増した。

 静まり返った工場で考えた。「今の世の中に合った桐たんすとは」「本物の桐の良さをどうやって知ってもらうか」。そうして生まれたのが、ぐっと身近な桐たんすだった。

 「たんす預金専用」とは“しゃれ”と思いきや、桐はアルカリ性で防虫効果があり、調湿性と耐火性に優れて気密性が高いことから桐たんすに貴重品を入れることは昔からの習慣だったという。加えて、忍び錠、忍び箱、隠し箱といった盗難防止のからくり細工も江戸時代から伝わる技術だ。

 商品は、クラウドファンディング「CAMP FIRE」の返礼品として製造し、からくりの仕組みは購入者に直接伝える徹底ぶり。もちろん、本来の桐たんす同様、全工程を職人が手組で仕上げる。

■半永久的品質

 かつては岸和田市や堺市など府南部に約350軒あった泉州たんすメーカーだが、現在では同社を含めて6社のみが製造を続ける。

 近年は、中国産の質の悪い桐を使った桐たんすが横行。さらに、他の木材の表面に桐のシートを貼っただけの悪質なケースも散見される。しかし、桐たんすの最大の魅力は、メンテナンスを施せば半永久的に使えることだ。

 「本物の桐を知ってほしい。決して安い値段ではないが、桐たんすほど、持つと豊かな気持ちにもなれる物はない。生きた証しとして、桐たんすを持ってもらえるとうれしい」。田中社長は、300年の歴史を未来につなげる。



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