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「医工福」連携 地域に活力 コロナ対策に貢献も

大正区でプロジェクト
2020年10月24日
りびんぐラボ大正のメンバーらが連携し、改良を重ねながら製品化したフェースシールド=大阪市大正区

 医療と工業、介護福祉の分野が連携し、地域の課題解決に挑む「医工福」連携プロジェクトを、大阪市大正区を中心にした関係者らが進めている。新型コロナウイルス流行を巡っては、逼迫(ひっぱく)した医療現場の物資の確保に貢献。区内では少子高齢化が進んでいるのを踏まえ、健康関連産業の技術革新が起こる地域として盛り上げたい考えで、2025年大阪・関西万博では遠隔地会場の一つになろうと意欲を示している。

 「チラシを入れる透明な袋で代用できないか」。金属加工会社「池田鉄工所」(同区)の林幸代社長は4月、新型コロナ感染防止対策の器具を作るため、連携している企業関係者らと試行錯誤。政府の緊急事態宣言時に地元の基幹病院から支援要請があったためだ。

 このうちフェースシールドは、顔を覆う透明部分の材料が不足する中、池田社長が代用品を考案。他の器具の中には、依頼から納品までわずか25時間だった品もあり、地域の新型コロナ対策に役立った。

 「ものづくりに携わる者として、何かをしないといけない。みんなが一致団結した気持ちの中で生まれた」と林社長は振り返る。

■顔の見える関係「軸」

 器具の製作にあたったのは、「りびんぐラボ大正」と銘打った同プロジェクトのメンバーら。地域のものづくり企業や病院などが今年1月に立ち上げていた。

 同区は、市内24区のうち人口は最少。65歳以上の割合は3割余りと少子高齢化が進み、健康寿命の延伸や生活習慣病の予防が大きな課題だ。こうした地域課題を区民と区内事業者などが協力して解決していくのを目的に掲げる。

 中核を担うのは圧力計メーカー「木幡計器製作所」(同区)。近年、医療機器分野に参入し、健康関連ベンチャー企業向けの支援拠点を開設する中で、医工連携の機運が高まっていた。

 プロジェクトが早々に成果を上げた背景について、大阪商工会議所西支部の森川博雄事務局長は「1社だけでは自社の工作機械以上のことはできないが、近所の工場と連携すればできる。顔の見えるネットワークをつくれているかがポイントだ」と指摘する。

 区内では13年度から、ものづくり企業を生かした地域活性化を官民で展開。区民向けの催しでは、参加企業が企画を考えながら交流を深めてきた。

 プロジェクト設立後は、新型コロナ感染拡大の中で医療関係者との連携が強まり、介護福祉の現場ともつながるようになった。

■試行錯誤できる距離感

 開発したフェースシールドについては、試作品を早々に製作した後、現場で使ってもらいながら意見交換。使用時の利便性向上のために改良を繰り返し、製品化までこぎ着けた。

 公立大の付属病院と企業の需給調整を前職で担当していた野崎研二・りびんぐラボ大正事務局長は、医工福連携について「試行錯誤できる関係性が重要で、距離感が近いからこそできた。やりとりを通して汎用(はんよう)性が高まり、医療や介護福祉の現場でより広く貢献できるようになる」と説く。

 同区の人口変動の特徴は長期的に経過観察する研究向きでもあるという。24区中、転出と転入の人数や割合が最少のためだ。

 製品開発に区民にも参加してもらうサポーター登録制度を検討中。国内外の健康関連企業が実証に活用する場となり、区民は最先端の製品に触れられる地域へと発展させたい考えだ。

 木幡計器製作所の木幡巌社長は「参画者を増やし、継続して地域課題の解決に取り組んでいく。万博で実装できる取り組みを進めていければ」と意欲を示している。



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