トレンド特急便

花森イズムを“読む” 神戸ゆかりの美術館で特別展

2021年1月13日

「花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸」 表紙画や「商品テスト」

花森さん自身が手掛けた表紙画。季節の移り変わりや暮らしの風景をさまざまな画材で描いた
会場には花森さんが愛用した机も展示

 雑誌「暮しの手帖」の初代編集長、花森安治さん(1911〜78年)の出身地・神戸市の「神戸ゆかりの美術館」(同市東灘区)で、特別展「花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸」が開催されている。花森さん自身が手掛けた表紙画のほか、同誌の代名詞ともいえる「商品テスト」などの誌面記事、棟方志功(1903〜75年)ら執筆者の手書き原稿を多数展示。戦争や公害に毅然(きぜん)と立ち向かった花森さんの思想や哲学に触れる“読む”展覧会になっている。3月14日まで。

 同誌は、終戦から3年後の1948(昭和23)年に創刊(当初の誌名は「美しい暮しの手帖」)。衣食住の知恵と工夫を発信し、物資が乏しくとも日々の暮らしの尊さに温かいまなざしを向けた。それは、戦時中に大政翼賛会の仕事に従事した花森さんなりの戦争に対する深い悔恨と反戦の誓いでもあった。

■多彩な企画記事

 今展では、現存する表紙原画153点のうち36点を展示。さまざまな画材を使い、人物や室内装飾などを繊細かつ大胆に表現している。

 編集長時代は東京を拠点としていた花森さんだが、故郷への愛着は強く、誌面企画「日本紀行」の第1回(1世紀71号・63年)は神戸市を取材。21ページにわたって港湾の大規模開発の様子などを紹介し、「これからの日本が、大切にしなければならない町の一つである」と締めた。会場では、同館が所蔵する神戸を描いた絵画も展示している。

 商品をメーカーごとに耐久性や利便性を比べる「商品テスト」は、広告掲載を一切しない同誌だからこそ、遠慮のない記事で好評を博した。会場では、クレヨンとパスを取り上げた際の画家によるテスト画が展示され、それぞれの個性を楽しむことができる。

■社会の矛盾を鋭く

 2017年に花森さんの全国巡回展が実施されたが、神戸市での開催はなかった。今展初日に会場を訪れた花森さんの長女・土井藍生さん(83)=東京都=は「帰って来られて喜んでいると思います」とほほ笑んだ。

 「亡くなる直前までとてつもない仕事量をこなし、生涯現役編集長だった」と同館学芸員の金井紀子さん。特に最終章の「社会の中の『暮しの手帖』」では、「見よぼくら一 五厘の旗」(2世紀8号、70年)をはじめ、戦争体験や公害問題など社会の矛盾を鋭く説いた。

 「今、花森さんが生きていたら、何を書くだろうか」と金井さん。雑誌創刊から73年、花森さんの圧倒的仕事量からあふれ出す熱量が、見る者の胸に問い掛けている。



サイト内検索