Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

京阪ホールディングス社長 石丸 昌宏さん

2019年8月8日

経営戦略の目玉は「東西軸」復権 沿線盛り上げに決意新た

大阪東西軸復権のイメージ(提供)

 京阪ホールディングス(HD)の新体制がスタートした。注目すべきは、2026年度までの長期経営戦略で描いた「大阪東西軸復権」への石丸体制の姿勢だ。大阪府市が目指す統合型リゾート(IR)の夢洲(ゆめしま)誘致を念頭に、京阪HDは、京阪電鉄沿線の天満橋と中之島を結ぶ中之島線の延伸を計画している。中之島線延伸が実現すれば、京都方面から夢洲へのアクセスが向上し、文字通り、東西軸復権につながる。新社長の石丸昌宏さん(57)に抱負を聞いた。

■「IRにらみ」

 阪急電鉄、阪神電鉄が大阪キタの梅田駅を10月に「大阪梅田駅」へ改称するニュースが流れたが、大阪は南北軸だけではない。京阪HDとして沿線の京橋、天満橋、淀屋橋、中之島を経て、25年大阪・関西万博開催地やIR誘致先の夢洲へつなぐ東西軸を復権したい。

 ただ、中之島線延伸を巡っては万博開催だけの理由では整備できない。半年間のイベントのためだけに路線を引くわけにはいかないためだ。需要が恒常的に見込めることを見極めた上で着手できるように準備したい。つまり、「IRにらみ」の状態だ。大阪誘致が決まれば、万博の開催前にIRは部分開業し、万博後に全面開業するという2期に分かれると推測しているが、今夏の参院選を機に動きが止まり、日程がずれ込むのではないかと心配している。

■沿線の価値を高める

 大阪では、南北に貫く御堂筋が整備された1937年ごろから「筋」がメイン道路になったが、それまでは東西の「通り」がメインだった。京阪グループは昔から東西軸を言い続け、90年の国際花と緑の博覧会(花博)開催時は京橋を大阪の「ヒガシ」と売り出したこともある。

 京橋は京都への玄関口であり、JRの大阪環状線と東西線、地下鉄長堀鶴見緑地線の各駅が位置する。京阪電鉄にとっては最大のターミナルだ。駅ビルの再生計画を起爆剤に大阪ビジネスパークや大阪城など周辺エリアを含めた回遊性を高める。京橋には世俗的な魅力もあるため、地域と一体になって取り組みたい。

 中之島では再生医療国際拠点の開発計画に参画する予定だ。淀屋橋については京阪HD所有の京阪御堂筋ビルと日本土地建物の日土地淀屋橋ビルの両敷地を一体化し、地上28階建ての高層複合ビル(高さ150メートル)に建て替える。イチョウ並木が始まる御堂筋玄関口にふさわしい風格のあるビルを整備することで、オフィス街の淀屋橋に新たなランドマークを形成する。

 京阪グループ創業地である天満橋も含め、それぞれの駅は東西軸の基幹になる。東西軸復権の取り組みは沿線の価値を高め、そこの居住者や来訪者を増やして人の流れをつくっていく。このため、京阪HDは不動産業に力を入れている。2019年3月期決算で営業利益の構成比は運輸業が112億円(33・6%)だったのに対し、不動産業が174億円(52・4%)と全体の約半分を占めた。経営戦略の「えきから始まるまちづくり」として、枚方市駅でもUR都市機構の賃貸住宅と一体的に取り組む意向だ。

■「論語と算盤」熟読

 大阪は今、風が吹いている。IR誘致や万博開催だけでなく、31年のなにわ筋線開業、37年のリニア中央新幹線大阪延伸、46年の北陸新幹線大阪延伸が予定されている。関西では21年にワールドマスターズゲームスも開催される。大阪が08年五輪を逃し、本社機能が東京へ移転するなど苦しい時期があったが、光りが当たってきた。追い風が吹く中、私自身、社長として覚悟を持って臨む。

 社長就任の記者会見で座右の銘を聞かれ、「明日ありと思う心の仇(あだ)桜」と答えた。親鸞(しんらん)聖人が詠んだ歌の一節であり、この後「夜半に嵐の吹かぬものかは」と続く。歌の意味は「いま美しく咲いている桜を、明日もまだ咲いているだろうと安心していると、夜中に嵐が来て散ってしまうかもしれない」。京阪グループが将来にわたって持続的に成長するため、取り組むべき課題は多い。全社員が一日一日を大切に継続性と革新性を両立させながら一丸となってチャレンジしたい。

 私は、司馬遼太郎氏の歴史小説が好きだ。中でも、『坂の上の雲』は何度も読んだ。明治日本の一体感が印象的だ。資金調達に頑張る人、情報戦略に力を発揮する人、火薬を作る人、みんなが戦略に基づいて大国ロシアをはね返した。企業活動に通じるものがある。

 京阪HDの前身である京阪電鉄は1906年に誕生した。創立委員長を務めた渋沢栄一氏の著書『論語と算盤(そろばん)』を熟読するようにと、元京阪電鉄社長の故佐藤茂雄氏から言われた思い出がある。社会のためになることが企業の利益につながる。私たちの鉄道事業は沿線の人たちに喜んでもらい、共感してもらうことだ。いま一度、沿線を盛り上げたい。

 いしまる・まさひろ 1962年生まれ。大阪市出身。北海道大教育学部卒。85年に京阪電鉄(現・京阪ホールディングス)入社、2017年に同社取締役常務執行役員、19年6月19日に社長就任。好きな言葉は「不易流行」。

 〈大阪東西軸復権〉 2026年度に向けた京阪ホールディングス(HD)長期経営戦略の柱。京都の玄関口となる京橋駅から再生医療国際拠点の中之島駅を経て、新たに統合型リゾート(IR)計画のあるベイエリアへ至る東西軸の復権に向け、京阪HDは沿線開発を推進している。


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