Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

大阪シティ信用金庫会長 河村 正雄さん

2020年2月6日

地域密着の「深掘り」目指せ! 業界の行く先を展望

天神橋筋商店街で阿波踊りを披露する人たち(大阪シティ信用金庫提供)

 昨年秋の叙勲で、大阪シティ信用金庫会長の河村正雄さん(72)が、旭日小綬章を受章した。バブル崩壊やリーマン・ショックの荒波の中、2013年の大阪市信金、大阪東信金、大福信金の3金庫合併を陣頭指揮し、大阪府内初の預金量2兆円を超す大阪シティ信金を誕生させた。地元の天神橋筋商店街に阿波踊りを呼び込むなど、独自の手法で地域経済の活性化にも注力している。信金マンとしての来し方を振り返り、超低金利や人口減少に直面する信金業界の行く先を展望してもらった。

■「おかげさまで」

 奈良県の薬師寺元管主、高田好胤氏による「おかげさまで」の書を、私の職場に掲げている。叙勲の受章はまさに感謝の二文字に尽きる。

 私は大分県生まれ、山口県育ち。大学時代は京都府で暮らしたが、米国ニューヨークのウォール街にちなんで呼ばれた「北浜ウォール街」で働きたい、と1970年に旧大阪市信用金庫へ入庫した。人生の50年間、半世紀を大阪のために仕事してきた。大好きな大阪の人たちに認められ、叙勲を受章することができたと思う。取引先や各種団体の皆さまのおかげだと感謝している。

 勲章伝達式があった昨年12月10日、私は妻と共に皇居に参内し、天皇陛下から「お体を大事にしてください」とのお言葉を賜った。古希を過ぎても元気に働けるのはうれしいことだと改めて感じた。70歳で理事長の職を、高橋知史氏に託したが、会長職は定年を迎える75歳まで続く。大阪のため、金融業界のため、まだまだお役に立ちたいと思っている。

■想定外のマイナス金利

 大阪市信金、大阪東信金、大福信金の3金庫合併については、それぞれの歴史、土壌、経営手法が違うため不安だったが、当時の私は大阪シティ信金の理事長として顧客訪問を続けた。合併に際して何に期待し、何に不満を抱いているか聞いて回った。役員もグループに分かれて顧客を積極的に訪問してくれた。大規模な合併だったため、組織の人事では、例えば旧大阪東信金の支店長を旧大福信金エリアの支店長に就かせるなど融合を意識した。

 合併によって101店舗あった支店を86店舗に統廃合した。約2500人だった職員は自然減によって約2千人に減らし、当期純利益100億円を目指した。しかし、合併時に想定していなかったマイナス金利によって収益環境は厳しさを増した。大阪府内企業のメインバンク調査によると、大阪シティ信金は府内の信金の中でトップの位置にある。中小企業に頼られているわけだが、今後は金融機関の競争が激化すると覚悟しなければいけない。

 おそらく、ここ1〜2年はマイナス金利だろう。大阪府信用金庫協会の新年互礼会で、私は「経営手腕が問われる」とあいさつした。信金は職員の本気度を上げなければいけない。支店長は経営の理念や方針を徹底する際、一つ一つの仕事が地域経済に役立っていることを率先して伝えるべきだ。それが職員の働きがい、やる気につながっていく。

 人材育成の面で言えば、大阪シティ信金は旧大阪市信金時代から大阪商工会議所主催「なにわなんでも大阪検定」の最多受験団体だ。検定は職員にとって勉強になる。前会長の新堂友衛氏が09年開催の第1回検定から受験を職員に勧め、私も第1回検定で合格した。

■道ははるか

 地域密着の取り組みもますます大切になる。大阪シティ信金は、商店街にぎわい創出支援の「商店街PLUS(プラス)事業」をはじめ、伝統行事の「八尾河内音頭まつり」への参加、私たちの野球部による球児への模範演技披露、少年野球大会への支援、日本三大祭りの一つ「天神祭」奉納花火への協賛などを行っている。こうした活動は、自己資本に表れなくても目に見えない財産として残る。今後は大阪商工会議所に一層関わり、25年大阪・関西万博にも参画できればと思う。重要なことは地域で存在感を示すことだ。

 20年の景況感について、大阪シティ信金の取引先1400社にアンケートした結果、「悪化する」との回答が33・8%に上った。昨年10月の消費税10%増税や米中の貿易摩擦、英国のEU離脱が影響し、さらに米イラン対立の余波も受けるかもしれない。特に、中小企業は人手不足の問題を抱えている。このため、大阪府信用金庫協会として合同企業説明会の開催にも取り組みたい。

 私が通った県立山口高に、卒業生の岸信介元首相が寄贈した「任重道遠」の書が飾られていたことを今でも覚えている。これが私の座右の銘になっている。任務は重く、成し遂げる道ははるかに遠い。私自身、この50年間いろいろと大変だったが、成し遂げるための道はまだ終わっていない。

 私にとって今年の漢字は「深」。深化し、深掘りしていく。

 かわむら・まさお 1947年、大分県生まれ。同志社大商学部卒業。70年に大阪市信用金庫入庫。2010年に同理事長。3金庫合併で、13年に大阪シティ信用金庫理事長、17年に同会長。大阪府信用金庫協会会長、近畿地区信用金庫協会会長。好きな歌は、鳥羽一郎さんの代表曲「兄弟船」。愛読書は、藤沢久美さんの著書「最高のリーダーは何もしない」。

 【商店街PLUS(プラス)事業】 商店街のにぎわい創出支援を目的にした大阪シティ信金のビジネスモデル。徳島県大阪事務所と連携した天神橋筋商店街の「阿波踊り」、渡島信金、帯広信金と共に開いた京橋中央商店街の「北海道物産展」などが注目を集め、2015年に全国信用金庫協会から第18回信用金庫社会貢献賞の「地域活性化しんきん運動・優秀賞」を受けた。


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