Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

ダイヤモンド電機社長 小野 有理さん

2020年2月13日

「人々の再生物語」 経営コンサルタントから転身

マザー工場がある鳥取市の鳥取砂丘で清掃活動に汗を流したダイヤモンド電機社員(ダイヤモンド電機提供)

 自動車・電子部品メーカーのダイヤモンド電機社長、小野有理さん(45)は、もともと経営コンサルタントだった。創業一族の依頼を受け、立ち行かなくなったダイヤモンド電機の経営を立て直そうと猛進中だ。同じく経営不振が続いていた田淵電機も引き受けてグループ化し、大阪ものづくり企業の再建に余念がない。「公器」として人々に受け入れられる企業を目指すと語る小野さんに、経営者としての信念を聞いた。

■ワンチーム

 2021年度(22年3月期)の連結売上高目標として1千億円を掲げている。私がダイヤモンド電機社長に就任した16年6月当時の売上高は500億円だったため、目標はその2倍に当たる。

 立ち行かない状況の中で人員を整理し、規模縮小する選択肢もあったが、それをすると、生き残るための開発力が伴わなくなる。規模拡大の戦略を取らなければ、守ることができない。目標の1千億円は「生存最適規模」と考えている。

 生き残るためには、自前の企業文化を育てるだけでは間に合わない。ダイヤモンド電機は自動車部品の点火コイルにおいてシェア世界一の挑戦権を持っているが、足らざるものを加える必要がある。

 パワーコンディショナー(電力変換装置)などの電子部品に強みを持つ田淵電機を19年1月にグループ化したことで、ワンチームとして高みを目指せるようになった。これはある意味、「人々の再生物語」だ。つまり、希望を持つことが大切ということだ。

■公器を目指す

 日本国内の企業倒産は、01年当時で年間約2万件を数えた。現在は1万件を切っているが、この件数はあくまでも負債総額1千万円以上のケースだ。倒産はよくある。企業は「つぶれる生き物」と認識すべきだろう。

 ダイヤモンド電機は1937年創業、田淵電機は25年創業であり、いずれも創業100年を目前にして倒産するところだった。企業は飛行機に似ている。船のように漂うことはできない。操縦を間違えれば、落ちてしまう。しかし、乱気流を抜ければ安定飛行に入ることができる。生き残るために努力は必要なのだ。

 私は、ダイヤモンド電機の経営理念をこう掲げた。「私たちはものづくりを通じてお客さまの発展に寄与し、信頼を積み重ね、社会の豊かさに貢献することで、多面体に耀(かがや)き、働く仲間たちの物心両面の幸せを追求します」と。私たちは、公器として人々に受け入れられる企業を目指す。

 私はもともと、経営コンサルティング会社勤務を経て05年に独立した。サービス業や製造業の社外取締役、顧問、コンサルタントとして経営全般の助言、指導を行い、社員教育にも取り組んでいた。

 16年6月、ダイヤモンド電機の創業一族から依頼を受けて社長に就き、経営を担うことになったが、私は「従業員」という言葉を絶対に使わない。「仲間」と言っている。昨年1月に田淵電機の社長に就任した時も「吸収合併」と言わなかった。「仲間化」と表現した。「従業員」「吸収」という表現は切な過ぎる。先ほども話したが、これは「人々の再生物語」だ。

■天かけるペガサス

 田淵電機は「ゼブラ」をブランド名にしている。ゼブラは、シマウマの意味だ。当時の田淵電機は、サバンナで四肢をへし折られて身動きできず、横たわったゼブラだった。上空でハゲタカが舞い、ゼブラの死を待つハイエナもいた。その状況の中で、私は社長を引き受け、仲間化した。

 先日、田淵電機とダイヤモンド電機両社のフォーラムを開いた。フォーラムの名称は「天馬 空を行く」。もはや、ハゲタカやハイエナの餌食になるゼブラではない。天をかけるペガサスだ。今後は「IoT」を軸とした新規事業の創出にも力を入れていく。

 経世済民こそが、社長が持つべき理念だ。私の持ち味を尋ねられても、「てめえの面は分からない」のが実際のところだ。ただし、仁と義を貫く覚悟を持って臨んでいる。

■連戦“猛”進

 私は、母校の大阪府立生野高、早稲田大でそれぞれラグビー部のコーチをしていた。昨年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会を観戦し、血湧き肉躍るものがあった。優勝した南アフリカのコリシ主将は「異なるバックグラウンド、人種が集まったチームだったが、一つの目標を持ってまとまり、優勝したいと思っていた」「何かを成し遂げたいと思えば協力できる」と語っていた。ダイヤモンド電機、田淵電機も出自の違う雑多な集団だ。コリシ主将の言葉に同じ思いを抱いた。

 今年の漢字は「猛」。売上高1千億円に向けて東奔西走、連戦“猛”進だ。この漢字を選んだ理由はもう一つある。猛の字には今年の干支(えと)“子(ね)”が入っている。十二支の先頭であり、始まりを意味する。そして、ネズミのように慎重さも持っていたいと思う。

おの・ゆうり 1974年、大阪市平野区生まれ。大阪府立生野高、早稲田大第一文学部卒。経営コンサルティング会社勤務後、2005年に独立。16年6月にダイヤモンド電機社長就任、18年10月にダイヤモンドエレクトリックホールディングス社長最高経営責任者(CEO)兼グループCEO、19年1月に田淵電機社長に就任した。淀川警察署協議会委員。少林寺拳法3段、柔道初段。早稲田大ラグビー部コーチとして清宮克幸監督の下で03年1月、日本一に貢献した。

【ダイヤモンド電機】 1937年創業。本社は大阪市淀川区。国内のマザー工場が鳥取市にあり、米国、中国、インドなど海外にも拠点がある。新潟ダイヤモンド電子(新潟県燕市)、田淵電機(大阪市淀川区)のグループ会社も含めた社員数は約4600人。2019年度の連結売上高は730億円の見込み。目標として21年度1千億円を掲げている。


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