Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

ワークアカデミー会長 大石 博雄さん

2020年4月11日

若者を元気にしたい 「UMEDAI」プロジェクト推進

大石博雄会長の著書

 日本一の高さを誇る超高層複合ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)から北方を見ると、梅田一帯が青空の下で輝いていた。「この空間を活用すれば『新しい学び』ができる」。ワークアカデミー(同市北区)の大石博雄会長(70)が、梅田の街を丸ごと大学に見立てた「UMEDAI(ウメダイ)」プロジェクトをイメージした瞬間だった。西日本最大のオフィス街であり、大学のサテライトキャンパスが集積し、うめきた再開発が進むエリアで、UMEDAIは2017年にスタートした。近著『偏差値コンプレックスよ、さようなら! 夢と勇気が人を育てる』を基に、推進するUMEDAIの内容、意義を聞いた。

■出会いがすべてを決める

 「キャリア教育への支援活動を通じて、次世代育成のために多大なる貢献をされ…」と、経済産業省から今年1月に表彰を受けた。暗中模索で作ったUMEDAIのトライアル(試み)を認めてもらえた。うまくいきだした。

 具体的には、うめきた2期区域の暫定利用事業に参画し、学生が飲食、施工業者と共に活動したほか、スーツメーカーとタイアップし、学生が本当に着たいリクルートスーツを考案した。出会いがあれば、学生は変わる。出会いがすべてを決める。学生と社会人の出会いに息吹を入れれば、“化学変化”が起きると思う。

 UMEDAIについて、『偏差値コンプレックス−』にはこう書いた。

 “さまざまなプロジェクトを進めていく中で、上位校の学生には「大学の名前に頼っていては通用しない」ことを知ってもらい、中位校・低位校の学生には「大学の名前に縛られずに、自分自身の能力を発揮することができるじゃないか」という気付きを与えるのです…企業側は、大学名という偏見を取り除いた学生たちの中身を見ることで、本当に欲しい人材を見つけることができ、同時に自社を優秀な人材獲得のためにアピールすることができます”

 若者を元気にしたい。若者が変われば、日本は変わる。これをやらないと日本はもっと駄目になる。

■「教育」ではなく「学び」

 私は大学生の頃から、起業家を目指していた。まずは自分を鍛えるため、世界を見たい、とヨーロッパに留学した。スペインの首都マドリードを拠点に世界74カ国を回る中で、発展途上国の貧しさにショックを覚えた。

 そのような時代に、英国や米国の経済圏に含まれている国では、英文タイピストの仕事が、女性から人気が高いことに気づいた。日本に帰国すると、ちょうどワープロが市場に出始めていた。そこで、私は、ワープロを操作したり、教える仕事は女性にふさわしく、社会進出の足がかりになると考えた。

 1982年、富士通の全面支援を受け、ワープロのオペレーターやインストラクターを養成する教室を始めた。これが、ワークアカデミーのスタートであり、私たちはこうして大学の中に入っていった。

 外から見た日本については『偏差値コンプレックス−』にこう書いた。

 “私の事業は女性が社会で独り立ちできることを支援することから始まりましたが、その一方で、私には「社会人教育や人間教育をやりたい」という思いがありました…若い頃にヨーロッパでリベラルアーツ(人を自由にする学問で自由7科=文法・修辞・論理・算術・幾何・天文・音楽=を基本とする)の考え方に影響を受けたからです。そのため、実学や資格以前に、人としての教養が大切だと考えていました”

 私は「学び」という言葉を使うようにしている。「教育」を使うと体が固まってしまい、学びの喜びが消えてしまうから。UMEDAIのテーマは「出会い×学び=成長」だ。

■始まりはハルカスから

 私はもともと、2014年完成のあべのハルカスに「ハルカス大学」を提案した。あべのハルカスに入居する大学、近畿日本鉄道と共同で新しい学びの場を作り、ハルカスの金融大学、百貨店大学、ホテル大学、建築大学などを通して業界を学べるようにした。そのハルカス大学の拠点である建物の23階から、太陽の日に当たる梅田が見えた。ハルカスの狙いをさらに進めたのがUMEDAIの取り組みだ。

 UMEDAIのフィールドは梅田に限らない。25年大阪・関西万博に向けて、海外の国々が出展するパビリオンの運営を学生たちに任せれば、出会いや交流の場になると思う。

 学生と社会の橋渡しについて、『偏差値コンプレックス−』にこう書いている。

 “社会に出てから活躍できる若い人たちを育てることによって、日本の未来を明るく元気に切り開いていくことのできる人材を輩出していく。これが、私が事業を行っている目的であり、私たちワークアカデミーの使命だと自負しています”

 『偏差値コンプレックス−』の続編として、『偏差値55以下の大学選び』を出したいと考えている。 

 おおいし・ひろお 1949年、神戸市生まれ。大学卒業後、スペインに留学。首都マドリードを拠点に世界74カ国を旅した。82年にワークアカデミーを設立し、富士通の全面支援を受けてOA(オフィスオートメーション)スクールを開校。2014年にハルカス大学プロジェクト、17年にUMEDAI(ウメダイ)プロジェクトを発足。若い頃の世界旅行がきっかけとなり、18年12月、ローマカトリック教会のフランシスコ法王に面会した。

 〈偏差値コンプレックスよ、さようなら!〉 大石博雄ワークアカデミー会長の著書。副題は「夢と勇気が人を育てる」。第1章「学生一人ひとりが、『なりたい自分になれる!』と信じられる社会へ」、第2章「資格試験を通して学ぶ喜びを伝える−学生に寄り添い伴走することが私たちの仕事」、第3章「若者が日本を変える! UMEDAIプロジェクト始動」、第4章「経営のど真ん中で女性が働く会社−ワークアカデミーの強さの秘密」。ダイヤモンド社。2019年発行。1650円。


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