Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

関西経済同友会代表幹事を退任 池田 博之さん

2020年5月20日

大阪モデルの構築を コロナ後、新体制にメッセージ

関西経済同友会の代表幹事プレート

 関西経済同友会代表幹事の池田博之さん(59)=りそな銀行取締役副会長=が、今月12日の通常総会を最後に退任した。2018年5月の就任と同時に取り組んだ25年国際博覧会(万博)誘致の実現に貢献し、昨年はG20サミットのホスト役を務めるなど、躍進する大阪・関西の財界をけん引した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、任期終盤は身動きの取れない状況が続いたが、最後の総会席上で、新体制の深野弘行、古市健両代表幹事へのメッセージは忘れていなかった。「コロナ後の大阪モデルを築いてほしい」−。池田さんの胸中に迫った。

■某国大使の言葉

 パリで開かれる博覧会国際事務局(BIE)総会出席のため、当時の松井一郎大阪府知事、吉村洋文大阪市長、世耕弘成経済産業相らと共に現地入りし、大阪・関西を各国の大使にアピールした。ロシアの都市エカテリンブルク、アゼルバイジャンの首都バクーと争った誘致合戦はまさに国際政治そのものであり、一般の銀行経営者では経験できないことをさせてもらった。

 アフリカの某国大使が語ったという言葉は象徴的だった。タンパク質が不足する自国民に対し、ある大国の人たちはコンテナいっぱいの魚を提供するが、日本人は魚の釣り方を教えてくれる。だから、「日本に投票したい」と応援してくれた。

 また、プレゼンテーションに臨む日本の経済産業省の懸命な姿も印象的だった。この時、私は、日本の過去、現在、未来を見た気がした。日本人で良かったと思えた瞬間だった。

 25年大阪・関西万博開催が18年11月に決定した後、19年6月にはG20大阪サミットが開かれた。前夜祭でホスト役の一人として関わらせてもらったが、大阪では、各国の要人警護のための大規模な交通規制も混乱無く行うことができた。大阪人はいざという時にまとまることができると評価する声を聞き、まさにそうだと感じた。

 平成から令和への改元に際し、天皇陛下に拝謁(はいえつ)することもできた。これも、得がたい経験だ。今年2月には関西経済連合会と共に恒例の関西財界セミナーを京都市で開いたが、それ以降の講演会やディスカッション、全国セミナーなどの活動が新型コロナ感染拡大によって中止になった。

■今こそ原点に戻るべき

 代表幹事としての活動は、思うようにできない状況で終わってしまったが、私は任期中に、災害からの「レジリエンス」(復元力、回復力、弾力の意味)に力を入れた。18年の台風21号によって関西空港が一時閉鎖となった。当時、私は出張先のフィンランドから帰国できず、右往左往した。その経験を踏まえ、関西経済同友会の組織内に関西レジリエンス委員会を設け、インバウンド(訪日外国人客)を支える「安心・安全な関西」の構築に向けた提言を行った。

 パビリオンなどの万博施設についても、台風などの災害を想定すればある程度の耐久性を持ったものを造らなければいけない。その提言をまとめている最中に、新型コロナの問題が起きた。「いのち輝く未来社会のデザイン」が万博のテーマだが、いのち輝く未来社会とは何なのか、根本をもう一度考える必要があるのではないか。

 関西経済同友会の創立趣旨(原点)にはこうある。

 「関西経済同友会は、戦後の荒廃がまだ癒えぬ1946年、日本経済の堅実な再建を標榜(ひょうぼう)する若手経済人有志が結集して創立した経済団体です。本会の特色は、自由主義経済に根ざす日本経済の健全な発展のために、社会のオピニオン・リーダーの一員たる企業経営者が個人の資格で参画し、時代を一歩先取りして自由に大胆に発言・行動することにあります」

 コロナ禍の今こそ、関西経済同友会は発言、行動しなければいけない。そのモデルになるのが万博だ。100年に一度の経済危機と言われるコロナ禍だが、深野弘行、古市健両代表幹事を中心にコロナ後の新しい大阪モデルを築いてほしい。

■「最後は人間だ」

 新型コロナ感染拡大を受け、「ヒト、モノ、カネ」の動きが止まれば、その落ち込みが大きいほど、復活には時間がかかる。私の銀行経営の経験を照らして考えれば、企業や個人向けに一日も早い支援策が必要だ。

 コロナ後について言えば、ビジネスのやり方は確実に変わるが、若い人たちには順応性がある。万博誘致に尽力した関西の学生を中心とする若者グループ「WAKAZO(ワカゾウ)」を見ていると、特にそう思う。

 私が最近読んで印象に残った本は、経営学者ピーター・ドラッカー氏(1909〜2005年)に関するもの。彼は「最後は人間だ」と語っている。まさにその通りだ。これからの人生は、人材育成に力を注ぎたい。私のモットーは有言実行だ。

 いけだ・ひろゆき 1960年、福岡県生まれ。横浜国立大経営学部卒。1983年、大和銀行(現・りそな銀行)入行。2017年、りそな銀行取締役副会長、東洋テック取締役。18年、関西経済同友会代表幹事。りそな銀行取締役副会長は20年5月31日付で退任する。

 【代表幹事コメント】 新型コロナウイルスについて、大阪府が、自粛要請を段階的に解除する方針を打ち出した。これに対し、関西経済同友会は5月15日付で代表幹事コメントを発表した。第2波への警戒と備えを怠らないよう指摘する一方で、経済界としての今後の取り組みに言及した。
 「コロナ禍はさまざまな社会課題を浮き彫りにした。これらの解決に向け、われわれ経済界は、オープンイノベーションの考えに立ち、ベンチャー企業との協業を積極的に進め、成果を生み出さなければいけない」と力説し、ベンチャー企業へのリスクマネーの供給確保を国に求めている。
 コメントは、深野弘行代表幹事名で発信している。


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