Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

関西経済同友会代表幹事に就任 古市 健さん

2020年6月4日

成長続ける関西けん引 万博、IRうめきた 「コロナ禍」環境は一変

弘世助三郎

 関西経済同友会の代表幹事に、日本生命副会長の古市健さん(65)が就任した。2025年大阪・関西国際博覧会(万博)、統合型リゾート施設(IR)、関西ワールドマスターズゲームズ(WMG)、うめきた2期開発などの好材料を背景に財界をけん引するつもりだったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって経済・社会環境は一変。「コロナ・ショック」「ポスト・コロナ」の不透明な時代のリーダーを担うことになった。いかに対応するか。関西財界の名門である日本生命史上6人目となる新・代表幹事に聞いた。

■メッセージはタイムリーに

 万博、IR、うめきたなど明るい話題ばかりで、追い風だったが、コロナ・ショックによって一変した。当面は、苦しい状態が続く。誰も経験したことのない壁を乗り越えるため、財界としていかにリードしていくか。大阪、京都、兵庫3府県の緊急事態宣言の解除が決まった5月21日、関西経済同友会はこうコメントした。

 『企業は、経済活動の再開を果たす中で、コロナ収束後を見据えた経営戦略や働き方を模索し、実践する時を迎えている。多くの企業が短期間のうちにテレワークやTV会議の活用、時差出勤など、新しい働き方に取り組み始めた。これらを一過性のものとせず、ビルド・バック・ベター(創造的復興)のスタンスで、コロナと共存するニューノーマル下の企業経営を率先して実行していきたい』

 関西経済同友会の「持ち味」は先見性だ。個人として会員になっており、企業としては言いづらいことも自由にもの申すことができる。これからもメッセージをタイムリーに出していきたい。

■持続可能な関西

 貿易摩擦に加eえ、コロナ対応に関連し、世界保健機関(WHO)を巡っても米中対立の緊張感が高まっているが、米国も中国も、大国として落としどころは探っており、火を噴くところまではいかないと思う。しかし、米政権による中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への締め付けが、アジアのサプライチェーン(部品の調達・供給網)を分断したことを考えれば、リスクに備える対応は必要だろう。

 関西の産業はものづくりをはじめ、ライフサイエンス(生命科学)、観光などに強みがあり、それぞれがシーズ(種)を持っている。観光であれば、文化や歴史資源だ。ライフサイエンスならば、産学のネットワークがある。こうした強みは、ポスト・コロナの時代も変わらないが、関西の特徴を生かすため、やり方を変えていかなければいけない。例えば、インバウンド(訪日外国人客)の観光においては、従来の大勢を団体で呼び込む方法は機能しなくなるかもしれない。ものづくりは役割分担も考えていかなければいけない。

 さらに、オープンイノベーションの考えに立ち、ベンチャー企業との協業を積極的に進めることも大切になる。

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする万博は、未来社会の実験場だ。ポスト・コロナがどんな社会になっているか分からないが、「コロナと共存するニューノーマル」を考えていかなければいけない。「コロナ・ショックを乗り越え、万博後も成長し続けるサスティナブル(持続可能)な関西」が、代表幹事としての抱負だ。

■次世代よし

 代表幹事に就任した5月12日の記者会見で、私は「人生100年時代、超高齢社会でも活力にあふれ、安心できる日本社会」と「三方よし、プラス次世代よし」も抱負として述べた。

 売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」は、滋賀県の近江商人の心得であり、日本生命創業のアイデアも、滋賀県彦根市で生まれた経緯がある。彦根の銀行家だった弘世助三郎氏(1843〜1913年)が、地元の相互扶助の組織に関係し、この仕組みを社会に広く実施したいと呼び掛け、日本生命の歴史は始まった。

 助三郎氏の孫の夫である社長の弘世現氏(1904〜96年)が、日本生命から起用された最初の関西経済同友会代表幹事であり、私が6人目となる。だからというわけではないが、私は、損得だけでなく、世代を超えた「よし」を議論し、若い人の意見を反映していきたいと思っている。

■夢に向かって

 最近読んで印象に残った本は『ホモ・デウス〜テクノロジーとサピエンスの未来』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)。人類の未来を描いたもので、コロナ・ショックを機に読み直した。好きな映画は『焼肉ドラゴン』(鄭義信監督)。大阪を舞台にした物語で、『ALWAYS 三丁目の夕日』に通じるものがある。夢に向かっていくところが印象的だ。

 ふるいち・たけし 1954年、東京都生まれ。東京大経済学部卒。77年に日本生命入社、2016年に同代表取締役副会長。日本生命からの関西経済同友会代表幹事起用は、弘世現、高橋壽常、井上收、小林幹司、加藤貞男の各氏に続いて6人目。20年度は、伊藤忠商事専務理事・社長特命(関西担当)の深野弘行氏と共に代表幹事を担う。若い頃は吉田拓郎、荒井由実、中島みゆきのフォークミュージックを好んで聴いた。

 【弘世助三郎】 弘世助三郎(1843〜1913年)について、大阪企業家ミュージアムは「わが国の生命保険制度の基盤をつくる」と題して次のように紹介している。
 滋賀にある多賀大社の相互扶助組織である「多賀講」に古くから関与してきた弘世は、欧米の生命保険制度を知り、滋賀県の警察部長であった片岡直温(1859〜1934年)を引き入れて、生命保険会社設立を計画。関西経済界に広く協力を求め、共同出資・均等出資型の「日本生命」を誕生させた。
 こうした広範な株主集団によって信用がもたらされ、その後のわが国生命保険制度の普及・発展につながる−と記されている。


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