Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

霊園・墓石のヤシロ社長 八城 勝彦さん

2020年6月21日

“墓じまい”は親心 超少子化の葬送儀礼提唱

北摂池田メモリアルパークのペット霊園=池田市

 “墓じまい”という言葉がある。先祖の墓を整理して、み霊を永代供養墓に納める考えだ。提唱者は、霊園・墓石のヤシロ(本社・箕面市)を営む八城勝彦社長(56)。墓じまいを実践する人たちの胸中には、次世代に負担をかけたくないという「親心」があると説く。八城さんの著書はまさに、『墓じまいのススメ〜これが親の子孝行〜』だ。超少子高齢化時代における葬送儀礼のありようを聞いた。

■勉強になったドイツの霊園

 2007年に池田市で大型霊園「北摂池田メモリアルパーク」を開発し、販売を始めたところ、霊園内に設けた永代供養墓「なごみ霊廟(れいびょう)」の契約者数が15年に1万件を超えた。多くの人が永代供養墓を生前から申し込む背景には、子孫に負担をかけたくないという思いがある。

 私はかつて、国内外の霊園を視察した。最も勉強になったのが、ドイツの都市ハンブルクの「オールスドルフ霊園」だった。ここでは、墓地の使用期間を25年と定めている。1世代を25年と捉え、自分の代の費用は自分で支払うという仕組みだ。本人が亡くなって墓に埋葬され、25年たった後、子どもがその墓を再契約して利用するか、利用せずに返還するかを判断しなければいけない。返還された墓地については、次の希望者に販売され、そして利用される。つまり、墓地をリサイクルするようになっていた。

 この視察を踏まえ、北摂池田メモリアルパークの中央に合祀(ごうし)墓を造った。墓の承継者がいなくなった場合は、合祀墓に遺骨を改葬する。以降については、霊園側が責任を持って祭祀(さいし)を務める。永代供養システム付きの霊園にしようと思った。この合祀墓が、永代供養墓のなごみ霊廟。いわば「セーフティーネット」だ。

■ペットと共に眠る墓

 海や山などの自然に遺骨をまく「散骨」について、1987年に亡くなった俳優の石原裕次郎さんに関するエピソードは有名だ。兄の石原慎太郎さんが「裕次郎は湘南の海が好きだったから散骨したい」と海洋散布を法務省に願い出た。当時は許可されなかったが、その後、一部を散骨することができたそうだ。

 実際、ライフエンディングサービス事業を展開する「鎌倉新書」が、墓を選ぶときのこだわりについて消費者の実態調査を実施した。その結果、「墓の種類」が「アクセス」や「金額」を抜いて1位だった。

 墓の種類で言えば、北摂池田メモリアルパークにはペット霊園を併設している。今や、日本ではペットの犬、猫の数は子どもよりも多いと言われている。飼い主にとって、ペットは家族の一員なのだ。霊園に設けたペットの葬祭ホールでは、ペットが好きだったおやつ、おもちゃ、花などをひつぎに入れて、最後の別れをしていただくことになっている。その後、火葬し、人と同じように「お骨(こつ)あげ」をしてもらう。ペット専用の合祀墓「絆の碑」を設け、納骨や永代供養も行う。飼い主とペットが共に眠れる墓「絆」も人気だ。

 霊園で一番人気の墓は「樹木葬さくら」。桜の木の下で13年間眠った後、なごみ霊廟で合祀し、永代供養する。一般的な墓が土地付き一戸建てだとすれば、樹木葬さくらは賃貸マンションだ。賃貸期間の13年間使用してもらった後、部屋をあけてもらう。13年という期間設定は十三回忌にちなんでいる。

 この樹木葬さくらには1人用、2人用、家族用の3種類があり、墓石にはメッセージを刻むようになっている。「幸せでした」「合縁奇縁 満開の桜のもとで2人仲良く永遠に!」「巡り逢(あ)えた家族 出会えた仲間達(たち)に乾杯 あ〜楽しかった」など。メッセージだけでなく、イラストが入った墓石もある。

■「終活」は暗い話ではない

 墓じまいと言うと、墓を処分するように思われがちだが、決してそうではない。むしろ、先祖を無縁仏にしないという思いで、私たちは提案している。

 「終活」という言葉があるが、これは決して暗い話ではない。人生の最期が近づくに当たって、準備しておこうという意味だ。最期は誰にでもいずれ訪れる。だからこそ、前向きに考え、子や孫たちの負担にならないようにすることが大切だ。亡くなった後のことを前もって決めておけば、気持ちは楽になると思う。私は著書の結びにこう書いた。

 「うちの親父(おやじ)は偉かったな。ボケずに、入院したと思ったらポックリや。その上、自分の葬式も契約済みで、何の準備も必要ない。お墓の事も、永代供養墓まで生前契約や。生命保険と遺産だけが丸々残って。ああ、持つべきものは、いい親やな」

 上手な「墓じまい」の次は、見事な「自分じまい」が望まれる時代が、すぐそこまで来ていると思いますが、どうでしょうか。

 やしろ・かつひこ 1964年、豊中市生まれ。84年、「大阪生駒メモリアルパーク(現・ヤシロ)」に入社。「大阪生駒霊園」で営業を担当し、5千件以上の墓石を販売した逸話がある。2004年、販売会社である「霊園・墓石のヤシロ」社長に就任。14年に著書『墓じまいのススメ〜これが親の子孝行〜』出版。趣味はゴルフ。
 【霊園・墓石のヤシロの歩み】 1994年、関西最大級の民間霊園「大阪生駒霊園」の第3期事業で単独の開発・販売事業を実施。以後、大阪府内で「金剛生駒霊園」「野崎霊園」「大阪メモリアルパーク」の開発・販売を手掛け、北海道でも「小樽祝津霊園」を販売。2007年に「北摂池田メモリアルパーク」の開発・販売を始め、09年に永代供養墓「なごみ霊廟」を開設。19年には「寿命寺池田御廟」で納骨堂販売事業を始めた。親会社「ヤシロ」の社長は兄の八城正明氏。


サイト内検索