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大正区の区政会議メンバー=6月19日 |
新型コロナウイルス感染拡大を受けた「新しい日常」の中で、地域の活動も新しい形が求められる。「イベントをやるか、やらないかではなく、第三の道を考えるべきだ」と大阪市大正区長の吉田康人さん(55)は、6月19日の区政会議で訴えた。「公募」区長である吉田さんは、政治家を目指して浪人生活を続けた苦労人。新型コロナ禍での地域活動のありよう、住民自治のあるべき姿について聞いた。
7月号の区民だよりで「新しい子育て」について書いた。外出自粛によって、家庭内は精神的にも「密」状態となり、保護者のイライラは増している。児童虐待を防ぎ、子育て家庭を地域から孤立させないための見守りを推進したい。その視点で、区長コラムに記している。
教育について言えば、甲子園球児の夢が絶たれるなど、努力が水泡に帰す雰囲気が生じている。夢を抱き、目標を掲げる大切さを、大人が訴えるべきだ。
コロナ禍に負けないチャレンジは、地域活動でも必要だ。最近、盆踊りはできるのか、「区民まつり」はどうかといった問い合わせを頂くが、私は、今までのやり方はできないと答えている。集まって声を出すイベントはこの先2〜3年はできない。そうだとすれば、感染症予防と両立できるコミュニティー活動を考えなければいけない。
イベントをやるか、やらないかという二者択一ではなく、第三の道を決めてやっていかなければいけない。第三の道の一例として、高齢者食事サービスを、会食から配食へ移行する動きが始まっている。従来は独居高齢者を集会所に迎え、食事を振る舞っていた。しかし、事業の目的である安否確認は、弁当の各戸配布を通しても実施することができる。コロナと共存したやり方はいくらでも考えられるはずだ。
コロナ禍にかかわらず、地域活動は時代に合ったものに変えなければいけない。役所の仕事もそうだが、ついつい前例踏襲してしまいがちだ。しかし、その結果、住民ニーズとかけ離れたものになってしまう。何のために地域活動をするのか、住民のためになっているかを検証しなければいけない。
私は大正区の区長就任時、地域活動を3点に絞ってほしいと職員へ伝えた。「福祉」「防災」「教育・子育て」だ。これは、サイレントな声を聴く区民意識調査でも明らかだ。このため、イベント、地域活動はこの3点につながるようにしつらえていく。コロナ禍は、地域活動の手段を変える機会になったが、原点に立ち返り、活動を組み立てることも必要だろう。ピンチをチャンスに変えることが大切だ。
私はかつて、大学受験のプレッシャーに負けて自信を失った。この時、人間が持つ弱さを知った。社会的弱者を支える世の中にしなければいけないと考えるようになった。大学時代の私は、障害児の子ども会でボランティア活動に専念し、自閉症の子どもの家庭教師をしたこともある。就職した東京電力で10年勤務し、参院議員の政策秘書を経て出身地の高槻市議になった。
その後、2002年に衆院大阪10区補選へ出馬し、03年と07年に高槻市長選へ立候補した。いずれも次点。この間は苦難の日々だったが、有権者の1票で選ばれる政治家の原点は住民ニーズであることを身をもって感じた。つまり、住民目線だ。毎朝、街頭活動していたが、今振り返れば、修行だった。私の訴えが人々に伝わっているかどうかではなく、政治姿勢を固めるために街頭に立ち続けていたと思う。
大阪市の公募制度に応じて区長になり、最初の勤務地は住吉区だった。小学校の防災学習であいさつした際に、突然倒れたふりをした。災害は突然起こるため、常日頃から「今起こったら何をするか」考えておく必要があることを伝えるためにそうしたが、批判を受けた。学校側に事前に相談すべきだった。
私は時代の先を読むことを心掛けているが、行動のスピードが速すぎるところがある。さじ加減が必要だ、と自らに言い聞かせている。
大正区はものづくりの町だ。これからの時代は付加価値の高い製品が一層求められる。何のために作るのかという点に目を向ける議論をしていきたい。また、沖縄県出身者やその子孫が区の人口の4分の1を占める。沖縄の人々は結びつきが強く、コミュニティーがしっかりしているため、そこから学ぶことは大きいと考えている。
公募区長は、市政改革の一環として12年度に制度化された。当初から公募区長を続ける民間出身者は私と浪速区の榊正文区長の2人だけになった。11月実施と報道されている「大阪都」構想の住民投票がどうなろうとも、私は住民ニーズを念頭に区長の仕事に励みたい。
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