Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

関西経済同友会代表幹事 深野 弘行さん

2020年7月2日

Wミッション遂行へ 「関西の持続的発展」と「社長特命の関西担当」

 関西経済同友会は、深野・古市体制がスタートした。代表幹事2年目の深野弘行さん(63)=伊藤忠商事専務理事=が掲げたテーマは、2025年大阪・関西万博を起爆剤とした「関西の持続的発展」。代表幹事1年目の古市健さん(65)=日本生命副会長=と共に、政策提言集団としてのミッションを遂行していく。経済産業省から伊藤忠商事へ転じ、社長特命の「関西担当」というミッションも受け持つ深野さんの横顔に迫った。

■松江で療養生活

 1987年発覚した東芝機械ココム違反事件の対応に、私は、通商産業省(当時)の輸出課長補佐として関わった。東芝機械がココム(対共産圏輸出調整委員会)に違反してソ連に数値制御(NC)工作機械を輸出した事件であり、日米摩擦に発展した。事件の後処理を担当し、毎日午前3時、4時まで働き続けた。その後も疲労を重ねる生活を続けた結果、身体を壊してしまった。当時の私は30歳になったばかりで、独身だった。療養のため、しばらく両親の元で過ごすことにした。

 父親の深野和夫は山陰合同銀行頭取だったため、住まいは松江市にあった。私は、日本庭園が有名な足立美術館を訪れたり、宍道湖の周辺を散歩して過ごした。宍道湖産シジミのエキスも服用し、体調を取り戻した。この間、父の姿を見ていたが、ちょうど脂が乗っていた頃であり、仕事が好きで仕方ない感じだった。島根経済同友会の代表幹事も長年務め、感謝状を贈られた。母は2017年に亡くなったが、父は今年で95歳になり、東京で暮らしている。先日見舞いに行き、元気な姿に安心した。

■関係構築が使命

 職場に復帰した私は米国勤務を経て、近畿経済産業局長や原子力・安全保安院長を務めた。経産省勤務三十数年のうち、3分の1はエネルギー関連の仕事だった。大手総合商社の伊藤忠商事から声を掛けてもらい、13年に入社、16年に「関西担当」となった。近畿経済産業局長の経験から、関西経済界の方々と知縁があったこともあり、社長特命として、伊藤忠商事発祥地である関西の財界と関係構築する仕事を任された。

 関西経済同友会は、戦後の荒廃がまだ癒えない1946年に、日本経済の堅実な再建を目指す若手経済人有志によって設立された。新しい時代を切り開く政策提言集団として活動した。いわば「ご意見番」だ。大阪の夢洲(ゆめしま)で25年開催する万博をはじめ、統合型リゾート施設(IR)の誘致というトピックスもあり、関西経済同友会に入会する人が増えている。約700人だった会員数はいま、800人を超えている。

■「バーチャル渋谷」参考に

 「関西の持続的発展」をテーマにした背景には、大阪で前回開催された1970年万博がある。万博自体は大成功だったが、その時の力強さが続かなかった。70年代の2度にわたる石油ショックによって重厚長大の産業は衰退し、関西の域内総生産(GRP)のウエートは下がってしまった。同じ轍(てつ)を踏むわけにはいかない。25年万博を通過点としてグローバルな都市圏を目指し、発展のモメンタム(いきおい)を持続させなければいけない。

 このため、関西経済同友会の中に、新しいテクノロジーやビジネスモデルによる産業構造の変化を探り、次世代の成長ドライバーを議論する「未来ビジネス委員会」を新たに設けた。25年万博を活用して低環境負荷社会の実現を目指す「環境・エネルギー委員会」も新設した。環境対応にはチャンスがある。

 先日、東京の渋谷をインターネット上でCGによって再現した「バーチャル渋谷」がニュースになっていた。新型コロナウイルス感染拡大を背景に、その試みは注目されている。私たちの「大阪・関西EXPO2025委員会」の参考になるかもしれない。新設、既存の委員会ともに、来年春には政策提言する予定だ。

■上期は「落」 下期は「転」

 7月1日で、今年も折り返した。上期は、新型コロナ危機が消費を直撃し、経済的にダメージを受けた。特に、関西はインバウンド(訪日外国人客)が前年同期比99%減った。下期は、上期の経験を基に第2波、第3波が来てもダメージを受けないよう乗り切り、経済が回復に向かえば、と思う。いま、ベンチャー企業に勢いがある。一般社団法人日本スタートアップ支援協会の取り組みも話題だ。上期は経済がすとんと落ちたが、下期は転換することを期待したい。漢字一字にすると、上期は「落」、下期は「転」となる。

 私は小学4〜6年生の頃、兵庫県西宮市に住んでいた。当時、父が日本銀行大阪支店に勤務していたためだ。自宅の最寄り駅は阪急今津線の甲東園だった。小学校高学年という年代の環境は人生に影響を与えるだけに、関西はなじみ深く、鉄道ファンにもなった。好きな小説は『阪急電車』や『阪堺電車177号の追憶』。松江市で暮らしていた時も、地元の一畑電車に乗って出雲大社を参拝した。懐かしい思い出だ。

 ふかの・ひろゆき 1957年、東京都生まれ。慶應義塾大経済学部卒。79年に通商産業省(現・経済産業省)へ入省し、北海道経済産業局長、近畿経済産業局長、原子力・安全保安院長、特許庁長官を歴任。2013年に伊藤忠商事へ入社し、現在は専務理事で、社長特命の関西担当。19年、関西経済同友会代表幹事に就任。

 【2020年度の関西経済同友会活動組織】 会務=総合政策審議会、調査企画部会、経済同友会連携会議▽政策・実行=企業経営委員会、中堅企業委員会、未来ビジネス委員会(※)、グローバル・ベンチャーエコシステム委員会、関西ブリッジフォーラム推進委員会、環境・エネルギー委員会(※)、文化の力委員会、KANSAI未来都市委員会、大阪・関西EXPO2025委員会、MICE・IR委員会、関西広域インフラ委員会、「関西×スポーツ」委員会、西日本経済同友会会員合同懇談会実行委員会、子育て問題委員会(※)、大阪食文化委員会、安全保障委員会、経済政策委員会、教育問題委員会(※)、地方分権委員会、海外交流委員会▽支援=グローバル適塾支援委員会、お水汲み祭り支援委員会▽啓発・研さん=会員懇談会、経営塾、若手の会(※は新設)


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