Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

常翔学園理事長に就任 西村 泰志さん

2020年8月6日

“淵源”くみ半世紀 「余人をもって替えがたい」人生

常翔学園中学校のオープンスクール=7月25日、大阪市旭区

 学校法人常翔学園(本部・大阪市旭区)の新しい理事長に、西村泰志さん(70)が就任した。2022年に創立100周年を迎える常翔学園の「淵源(えんげん)」は関西工学専修学校であり、その流れをくむのが現在の大阪工業大だ。西村さんは大阪工業大の卒業生であり、学長も務めるなど半世紀にわたって常翔学園と共に歩み続けた。「余人をもって替えがたい」とは理事長就任時の周囲の声。3大学、2高校、2中学校をたばねる学校法人トップの素顔に迫った。

■「負けんぞ」

 工業技術者が必要とされた「大大阪」時代に、関西工学専修学校はスタートした。現在は大阪工業大、摂南大、広島国際大、常翔学園中高、常翔啓光学園中高を設置する学校法人に成長し、卒業生は延べ30万人に達した。

 私自身、1969年に大阪工業大工学部建築学科に入学して以降、50年にわたって育ててもらった。大阪工業大は私にとって空気みたいに身近な存在だ。それだけに、大学の質を向上させたいと思う。卒業生から「近畿大工学部に負けるな」などと激励を頂く。「負けんぞ」という気持ちで臨みたい。

 大阪工業大は2021年4月、枚方キャンパスの情報科学部にデータサイエンス学科の設置を届け出ている。17年4月に誕生した梅田キャンパスの利便性を生かし、リカレント教育(学び直し)に力を入れたい。終身雇用制度が崩れる中、東京大大学院教授の提唱した「40歳定年制」が話題になっている通り、リカレント教育はますます重要になる。

 摂南大は1975年に開設し、45年たった。今年4月に大阪府内唯一の農学部を枚方キャンパスに増設した。未来社会のスマート農業に対応するなど大学の特徴を一層出していきたい。ラグビーの名門常翔学園高と摂南大による部活動の交流も大切だ。

 現在、常翔学園高から大阪工業大、摂南大、広島国際大へ進学する割合は全体の27%だ。常翔啓光学園高から3大学への進学割合が26%。ぜひ、この割合を押し上げたい。進学割合が高くなれば、結果的に、大学の偏差値は上がり、魅力の向上につながる。

■“四位一体”

 私が大阪工業大の助手、講師だった若い頃、ゼミの合宿先だった長野県白馬村で、ゼミ生と一緒に登山、スキーを楽しんだ。「直滑降の西村」と呼ばれ、ゼミ生や教授とのつながりを強めた思い出がある。2期4年務めた大阪工業大の学長を退任した時は、学生たちがキャンパスで花道を作ってくれた。大学歌を演奏してもらい、エールを受け、胴上げをしてもらった。一生の宝物だ。

 人間関係が希薄な時代と言われるが、大阪工業大には人と人のつながりがある。これが最大の特徴だ。常翔学園には「四位一体」の経営理念がある。学生・生徒、保護者、卒業生、教職員を四位一体、つまり家族と捉えた経営をすることで、多くの優秀な人材を世に送り出し、社会と常翔学園の永続的な成長、発展を目指すという理念だ。

 昨年春、大阪工業大の硬式野球部が近畿学生1部リーグで66年ぶりに優勝し、全日本大学野球選手権大会に出場した。東京新大学野球連盟1位の創価大に敗れたが、試合会場の東京ドームには学生、保護者、卒業生、教職員が詰めかけた。まさに、四位一体の応援だった。

■コロナ禍の教育

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、オンライン授業などの情報通信技術(ICT)教育は一気に進むが、教育の基本は人と人のつながりであり、対面授業を大切にしていきたい。

 コロナ禍の教育を巡って、長期休校を機に9月入学の導入が浮上した。結果的に立ち消えとなったが、私も、授業の遅れを取り戻すためだけの短絡的な導入には反対だ。私が大学へ入学した1969年は東大安田講堂事件が起きるなど学生運動が盛んだった。当時も授業の遅れは生じていたが、長い目で見た場合、2、3カ月の遅れに対する影響はそれほど大きくなかった。誤解を恐れずに言えば、9月入学の導入は社会全体が対応できるようにならなければ難しい。

■「挑戦したい」

 常翔学園100周年記念事業について、派手なことをする必要は無いと思うが、各大学、高校、中学校の力を底上げしたい。例えば、学園3大学の教授陣が、25年大阪・関西万博の新しい技術に貢献することができれば、学生や生徒に刺激を与えることができる。

 私の教え子に、吉本興業に入りたいと言って来た学生がいた。「挑戦したい」と吉本興業の芸人養成学校へ進んだ。結局、3年で辞めたが、現在は、掘削工事のボーリング関連会社で元気に働いている。興味を抱いたことにチャレンジする姿は尊いと思った。

 「世のため、人のため、地域のため、理論に裏付けられた実践的技術をもち、現場で活躍できる専門職業人を育成する」という崇高な精神で、常翔学園は1922年にスタートした。理事長として運営に携わる重責を感じている。

 にしむら・やすし  1950年、愛媛県生まれ。大阪工業大工学部卒、大阪工業大大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。76年に大阪工業大助手となり、講師、助教授を経て教授。学長を2015年11月から19年10月まで務めた。20年7月20日に常翔学園理事長就任。博士(工学)=京都大。日本建築学会賞(論文)受賞。好きな歌は水戸黄門の主題歌「ああ人生に涙あり」。

 【“常翔”教育】  2021年入試に向けた常翔学園の2中学・高校による進学説明会が始まった。「常翔(上昇)気流に乗らないか」をキャッチコピーとする常翔学園中学校は、7月25日のオープンスクールで、在校生が学園生活を紹介。コロナ禍による長期休校中のオンライン授業実施を念頭に、根来和弘教頭は「“常翔”教育を止めない」と話した。


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