Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

一般社団法人バスケットボール推進会代表 山口 貴久さん

2020年11月12日

大阪拠点にバスケ教室 生きる力を育てたい

山口貴久さんが主宰するバスケットボール教室のメンバー=本人提供

 高校バスケットボールを描いた漫画『スラムダンク』が週刊少年ジャンプに連載中だった1995年、バスケットボールの競技人口は100万人を突破したとされる。現在は米プロバスケットボールNBAの日本人選手が活躍し、来年の東京五輪では3人制「3X3」が採用されるなど話題は尽きない。競技熱が続く中、大阪を拠点に教室を主宰する一般社団法人バスケットボール推進会代表の山口貴久さん(36)は「バスケを通じて生きる力を育てたい」と話す。

■人気漫画に名せりふ

 静岡県出身の私は、サッカーを自然と始めた。でも、うまくできず、周囲の子どもたちの間で疎外感を抱くようになった。そのタイミングで、友達からミニバスケに誘われた。小学校の高学年になり、運動能力が高くなりつつあったので、競技に夢中になり、バスケを続けた。その頃出会った人たちは一生の仲間だ。

 バスケの試合には流れがある。良い流れではないとき、どうするか。逆境を巻き返す方法をチームメートと考える。そんな戦い方は、社会に出てからの戦い方に通じる。バスケを通して生きる基礎を学んだと思う。だから、私はバスケが好きだ。

 スラムダンクにこんな場面がある。湘北高バスケ部主将赤木剛憲の妹、晴子から入部を薦められた桜木花道は、初心者にもかかわらず、彼女目当てに入部する。やがて競技に魅了されて力を付け、インターハイで強豪の山王工戦にけがを押して挑む。その時、バスケに寄せる思いを口にした桜木のせりふは「大好きです。今度はうそじゃないっす」。

 湘北高バスケ部を休部し、不良グループと付き合う三井寿が恩師に胸中を明かしたせりふは「安西先生、バスケがしたいです」。いずれの場面も、スラムダンクの愛読者にとっては印象に残る名せりふだ。

■新しい刺激

 中学、高校でバスケ部だった私は、進学先の東洋大でもバスケのサークルに所属し、3人制「3on3」(3X3の前身)の大会に出場した。ディスク・ジョッキー(DJ)が音楽を流す中で、簡易なストリートコートで試合は行われた。イベント自体もだが、プレースタイルも、自分が持っていたバスケの常識から飛び出し、新しい刺激を感じた。この体験がきっかけとなり、日本初のプロ・ストリートバスケットボールリーグ「Legend」の運営会社に就職した。

 今でこそ、3人制のプレースタイルは珍しくないが、当時は全くもって新しい取り組みであり、毛嫌いする人たちもいた。つまり、“ショー”バスケに対し、「それはバスケではない」との指摘だ。しかし、Legendは「バスケってこんなに面白いんだよ」と発信し、バスケ好きを増やすことに信念を持っていた。

 残念ながら、Legendは幕を下ろし、私が働いていた運営会社も経営難に直面。会社の上司に紹介してもらい、私は、大阪にあるバスケのレンタルコート運営会社に再就職した。東大阪市や堺市の店舗を任され、金銭管理やバスケ教室開催の手法を学ぶことができた。2014年にこの会社を辞め、一般社団法人バスケットボール推進会(大阪市中央区)を立ち上げた。

■指導者の地位向上を

 推進会の活動は子ども教室、社会人サークル、アマチュア大会の運営。このうち、柱となる教室は大阪、兵庫、和歌山の3府県に15会場ある。生徒は4歳児から中学3年までの約400人。指導は私と2人の社員を中心に、現役の学生や競技経験のあるサラリーマン、自営業者ら約30人がアシスタントコーチ、サポーターズとして関わっている。

 活動を通して思うところがある。指導者の社会的地位を上げたいということだ。指導者として生活できる収入があれば、その人は指導の仕事に集中でき、責任を持って臨める。結果的に、指導の質は高くなる。指導を受ける子どもたちの技術向上につながり、人間としての成長を後押しすることができる。

 いま、日本のバスケ界は、八村塁選手や渡辺雄太選手がNBAでプレーし、子どもたちに夢を与えている。3X3は来年の東京五輪から新種目として追加され、衆目を集めるようになった。サッカー界のように、プロリーグのチームを頂点にユースチーム、ジュニアチームのピラミッドが各地に誕生している。まさに追い風を受けている。だからこそ、プロの指導者は必要だ。そのための環境が整備されるよう、私自身、行政などに働き掛けたい。

■大きな財産

 バスケで食べていくのは難しい。しかし、食べていけるような環境づくりが私の人生のテーマだ。いろんな問題にぶち当たるが、そのたびに解決方法を考えている。失敗から学ぶこともある。スラムダンクで最も好きな場面は、インターハイで湘北に負けた山王工のコーチ堂本五郎が選手に語り掛けるせりふだ。

 「はい上がろう。『負けたことがある』というのが、いつか大きな財産になる」

 やまぐち・たかひさ 1984年、静岡県焼津市出身。東洋大卒。一般社団法人バスケットボール推進会代表。日本バスケットボール協会公認コーチ、日本体育協会公認バスケットボール指導員、ビジネス堀江倶楽部会員。


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