Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

大阪国際滝井高 バレーボール部監督 才崎(*1) 哲次さん

*1 崎は大が立
2021年1月20日

空間を超える和の力 春高バレー準優勝

 大阪国際滝井高(守口市、松下寛伸校長)が、バレーボールの第73回全日本高校選手権・女子で準優勝した。準決勝で前年覇者の東九州龍谷高(大分県)を破り、29年ぶりの優勝に王手をかけたが、就実(岡山県)に1−3で惜敗。「悔しい気持ちは当然ある」と才崎哲次監督(64)。結果への悔しさをかみしめる一方で、新型コロナウイルス禍の1年を振り返り「チームワークは成長した」と過程に胸を張った。「空間を超える和の力」が、才崎さんの座右の銘だそうだ。

■ヒヤヒヤの日々

 昨年の全日本高校選手権(春高バレー)はベスト8だったので、今年は優勝を目標にしていた。しかし、昨年の春高バレーが終わるやいなや、新型コロナウイルス感染が急激に広がり、3月から練習できなくなった。6月に再開できたものの、練習時間は制限され、インターハイも、国体も中止になった。普段の練習ができず、公式戦も減る中、気持ちを切らさず、体力や技術を充実させることは大変だった。

 しかも、8月には島根県の私立高サッカー部寮でクラスター(感染者集団)が発生してニュースになり、その前には京都の私大でもクラスターが起きていた。チームで1人でもコロナに感染すれば、チーム全体に影響する。10月の春高バレー大阪府予選でも、感染者が試合直前に出ることになれば、棄権しなければいけないルールだった。このため、ヒヤヒヤでもあった。

■自主性を培う

 コロナ対策として、自宅から通学する生徒もバレー部寮に迎え入れた。自宅の家庭内や通学の電車内での感染を防ぐためだ。バレー部の生徒26人全員が合宿生活することになり、学校近くの花博記念公園で自主的な練習を始めた。部活動禁止の期間中、私は自転車で様子を見に行く程度。生徒たちは集団行動を避け、数人ずつに分かれてランニングやダッシュをこなし、芝生でボールに触れていた。

 寮内でも、腹筋や背筋のトレーニングができる部屋を設け、練習の創意工夫を忘れなかった。時には、卓球を楽しんで気分転換を図り、毎日反省会も開いて気持ちをつないでいった。そこで、生徒たちは自主性を培った。手洗い、うがいも怠らなかった。自覚のレベルは確実に上がっていった。

 寮母も、生徒たちの夢をかなえたいと懸命だった。寮で暮らす生徒の数が一気に増えても、イタリア料理や韓国料理など多種多様なメニューを用意し、毎日の食事を楽しみに待つ生徒たちの期待に応えてくれた。春高バレー決勝で負けた時、生徒たちは悔しかったはずだが、周囲の人たちへの感謝の気持ちも抱いたと思う。

 この1年間、コロナをどう捉え、いかに向き合うかを考え続ける中で、私自身も指導者として悩んだ。しかし、純粋無垢(むく)に信じてくれる生徒たちの姿を見た時、私は「やらなアカン」と奮い立った。同時に、普段と違う環境で生徒たちはお互いを思いやり、チームワークは成長したことを実感した。

■尊敬する先輩

 私の座右の銘は「空間を超える和の力」。コロナ対策でも言える話だが、自分のことだけを考えるのではなく、みんなを思うことが大切だ。離れていても心はつながっている。お互いを感じ取る力は人生を豊かにし、つらいことも乗り越えられる。「空間を超える和の力」を感じれなければ、鈍感になってしまう。これを感じ取るところが、日本人の素晴らしさではないだろうか。

 「空間を超える和の力」は、前監督の河本昭義さんが創った言葉だ。1991年に春高バレー、インターハイ、国体の3冠を達成した後、企業チームの東芝シーガルズへ監督として招聘(しょうへい)された。

 その後、東芝シーガルズは休部になったことから、河本さんは地域密着型のクラブチームを出身地の岡山県で設立。賛同する県や地元企業、地域の人たちに支えられながら、岡山シーガルズの監督としてVリーグを戦い、昨年は準優勝に輝いた。

 河本さんは、大阪国際滝井と系列中学の大阪国際大和田の総監督も務めているため、生徒たちは岡山遠征し、卒業生の宮下遙選手(2013年卒)たちの胸を借りている。岡山シーガルズの選手は偉ぶるところがなく、純粋にバレーボールに取り組んでいる。その姿に、生徒たちは刺激を受けている。

 実は、大阪国際大和田中では朝練習を強制していない。中学生に勝負や勝利を求め過ぎると、バレーを嫌いになってしまうからだ。つまり、理解した上で頑張ることが成長につながる。これが、河本さんの考えだ。河本さんも、私も、同じ大阪体育大の卒業生。私にとって、河本さんは尊敬する先輩であり、指導者だ。

■「成長誇りに思う」

 今回の春高バレーで、29年ぶりの優勝を果たせなかった。悔しい気持ちは当然ある。しかし、学校法人大阪国際学園は「生徒たちが成長する」ことを重要視している。奥田吾朗理事長はこう言って、生徒たちをたたえてくれた。

 「コロナ禍でよく頑張った。人間としての皆の成長を誇りに思う」と。

 さいざき・てつじ 1956年、大阪府高石市出身。大阪体育大卒。大阪市立中学校の保健体育教諭を経て、93年から大阪国際滝井高校の教諭、バレー部監督。趣味はカメラ。好きな歌は、西田敏行さんの「もしもピアノが弾けたなら」。

 【大阪国際滝井高バレー部】 帝国女子高時代の1987年に「強化クラブ」として活動を始め、91年に春高バレー、インターハイ、国体の全国3冠を達成。今年1月の春高バレーは女子決勝で就実(岡山)に敗れたが、準決勝で前年覇者の東九州龍谷(大分)に快勝し、衆目を集めた。卒業生には歴代の全日本代表選手が多く、2002年卒の山口舞さんは12年ロンドン五輪の銅メダリスト。


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