Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

日本串カツ協会理事長  吉野 誠さん

2021年5月9日

食文化継承へ連携 コロナ禍に「絆」強める

 串カツを共有ソースに漬けるのは最初の1度きり。俗に言う“2度漬け禁止”を明文化しようと大阪市城東区の飲食店主、吉野誠さん(41)は、2019年に日本串カツ協会を立ち上げた。大阪発祥の食文化を継承するネットワーク作りは果たして、昨年来の新型コロナウイルス禍にあって「店と店の絆」を強める役割も担うことになる。妻の敏子さんと共に串カツの普及活動に余念が無い吉野さんに尋ねた−。コロナ禍に何を思いますか?

■淘汰の時代

 飲食店が淘汰(とうた)される時代だ。大手もつぶれるほど。ここまで「縛り」がきついと、心が折れそうになる。こんな時、常連客の力は大事だ。コロナ感染防止のための自粛ムードが強まっていた昨年12月、私の店に来た建設業界の親方は「夜8時で店を出て、帰って行くのが常連の役目だ」と言い、営業時間制限を気遣ってくれた。親方の言葉は心に響いた。「この店は常連が守る」と話してくれる客もいて、常連客のありがたみを感じる。いい店にはいい客が付く。そんな店同士で連携したいと改めて思った。

 もともと、私の店は18年から、大阪市城東区内の他店に先駆けて食事宅配サービス「ウーバーイーツ」に参入していたが、その後、大手飲食店も参入し、客の奪い合いになっていた。さらにコロナ禍も加わって、来店客数は急激に減った。店のオープン11周年だった昨年12月6日は本来ならば、めでたい日なのに、初めて“無観客”になってしまった。

■食品ロス

 コロナ対策の「まん延防止等重点措置」が大阪市で始まった4月5日、私の店は休業に入った。理由は食品ロス。例えば、その日の食材として10人分を用意しても、来店客が2〜3人にとどまれば、余った食材が腐ってしまうため、処分しなければいけない。たるに入れた生ビールも捨てることになる。何しているのか分からなくなってしまう。これだけ巣ごもりの生活スタイルが定着すると、仮にコロナが収束しても、飲食業界の復活は難しい。

 そう考えると、常連客の力が重要になる。「知っている店主の顔を見に行こう」と言ってもらえるようになることが大事だ。もう一つ、これからは店同士の連携も欠かせない。

■活動宣言

 20年9月4日の「くしの日」、日本串カツ協会を一般社団法人化した。「串カツ共有ソース2度漬け禁止(K2K)」の公式ルールを広めるためのネットワークだ。コロナ禍の21年4月1日に公開したインターネットのホームページ(HP)で、日本串カツ協会のありようをこう説明している。

 「ソーシャルディスタンスが推奨される中でも、人と人(店と店)の絆を高めるルールを見直し、単に共有ソースをやめるのではなく、安心して串カツを召し上がり、提供できるスタイルを普及させていただくため、発足いたしました…人と人がつながるための団体として、無限の可能性を秘めた串カツ普及活動をこれから進めて行くことを、ここに宣言いたします」

 「店と店の絆」で言えば、日本串カツ協会を通して食材の仕入れコストを抑える仕組みも考えられる。コロナ禍で困っている店同士が支え合える。私がしたいことの一つが店同士の結束だ。冒頭に話した通り、飲食店淘汰の時代にあっても、頑張っている店は多い。そこには、いい客が付いている。そんな店同士が連携するための団体が日本串カツ協会だ。

■ぶれない

 私は宮城県出身。地元の高校を卒業して庭師として働いていたが、料理の仕事に興味を覚え、大阪の専門学校に進んだ。就職した大阪・新世界の串カツ店で、接客の素晴らしさを知った。客の温かさに触れた。新世界の大衆演劇に通うファンのオバチャンたちがその前後に来店し、私に差し入れしてくれた。好物の「めんたいこパン」も頂いたことがある。本当に人情があふれていた。

 新世界の串カツ店にお客として来ていた1人が、敏ちゃん(妻の敏子さん)。独立を思考していた頃で、交際を始めて半年で結婚した。私が揚げる串カツの一番のファンだと思っている。

 (敏子さんから「頑固でぶれない性格」と言われることについて)そうだと思う。頑固だから日本串カツ協会を立ち上げ、「K2K」の公式ルールが必要だと考えた。串カツ食文化の普及、継承のため串カツ検定も運営したい。私自身、串カツに最も詳しい人間になりたい。

 25年大阪・関西万博に向け、英語、中国語、韓国語などの「K2K」公式ルールも作らなければいけないと考えている。

 (聞き手は、深田巧)

 よしの・まこと 1979年、宮城県村田町生まれ。辻調理師専門学校卒。妻の敏子さんと共に経営する「新世改94ダイニング誠」(大阪市城東区)で「のびーるチーズ」串カツ選手権などを企画。好きな歌は湘南乃風の『純恋歌』で、メンバーのHAN―KUNは知人。人生を左右した漫画は「サラリーマン金太郎」。日本唐揚協会創設者やすひさてっぺいさんを尊敬している。

 【串カツ共有ソース2度漬け禁止(K2K)公式ルール】
 日本串カツ協会が2021年4月1日に発表。「K2K」公式ルールの意義について、理事長の吉野誠さんはインターネットHPで「業界の質の向上を図るとともに、お客さまに安心して串カツを食べられるという安心感を提供します」と説明。コロナ禍を念頭に「感染予防対策として日本中に正しく深く知っていただく」との狙いも記している。


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