Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

ロングライフホールディング社長 桜井ひろみさん

2021年6月2日

福祉こそサービス業 創業理念を追求する2代目

ロングライフ池田山手の外観(ロングライフホールディング提供)
ロングライフ池田山手の内観(ロングライフホールディング提供)

 ロングライフホールディングの創業は1986年。昨年1月就任した2代目社長の桜井ひろみさんにとって、「福祉こそサービス業」と唱えた創業者の「理念」追求が最大のミッションだ。昨春オープンした有料老人ホーム「ロングライフ池田山手」(池田市)を訪ね、桜井さんに聞いた。有料老人ホームを運営する眼目はやはり、入居者やスタッフが打ち解け合う「大家族」をつくることですか?

■「GFC」でケア実践

 大家族は魅力的だけど、1人の時間を大切にする入居者の方もいる。「個」を尊重する時代背景を考えれば、それも自然。だから、ここでは「いいとこ取り」ができればと思う。

 例えば、入居者の方が元気ならば、私たちは遠目に接することを心掛け、距離感を大切にする。そして、必要に応じて寄り添うようにしている。また、入居者同士で共感的理解が生まれることもあるため、馬が合いそうな方々の食事の席を近づけるなどのコーディネートをする。これは、私たちが取り組む「GFC(グッド・フィーリング・コーディネート)」の考え。日本人の国民性、風土、習慣に即したケアの方法論だ。

 高齢になると、情報が入りにくく、不便や不安を覚える。特に、現代社会はデジタル化が急速に進むため、戸惑うことが多い。だけど、ここでは私たちスタッフが交代で24時間一緒に暮らしているので、いつでも必要な情報を伝えることができる。「インターネットはこうしたら良いですよ」とか、今なら、新型コロナウイルスワクチン接種の相談に応じられる。

■支配人は一流ホテル出身

 ロングライフホールディングはもともと、創業者の遠藤正一さんと現・会長の北村政美さんが「業界に革命を起こそう」と始めた。モットーは「福祉こそサービス業」だ。

 私たちスタッフは毎朝、全員参加の朝礼でラジオ体操を行っている。目的は、自分自身の体調を知る(健康管理)▽仕事への切り替え▽自分の体をほぐす▽仲間の体調を知る−の4点。これは社員手帳にも記してある。プロとして現場に立つためだ。裏を返せば、心に曇りがあるスタッフは入居者の前に出てはいけないと考えている。

 大阪には、聖徳太子が四天王寺に「悲田院」を設けた歴史がある。孤児、貧窮者の救済施設であり、慈悲の思想がベースになっていた。しかし、私たちのベースはサービス業であり、決して「やってあげる」というような「上から目線」の態度を取らない。入居者に向かって童謡を歌えば喜ぶという安直な発想もしない。ここ、ロングライフ池田山手支配人の小川ひとみさんは一流ホテルの出身者で、まさにサービス業の教育が行き届いている。

■「日本一小さな 有料老人ホーム」

 私は1966年に生まれ、祖父母と一緒に暮らしていたので、地域の人たちがよく自宅に集まっていた。高齢者の方々からいろんな話を聞かせてもらい、かわいがられながら育った。

 その後、大学を卒業して就職した会社でキリスト教信者の先輩に誘われ、教会の勉強会に参加するようになった。洗礼を受けた時、教会からもらった月刊誌に載っていた「日本一小さな有料老人ホーム」の記事が目に留まった。一人一人と親密に関われそうな気がして、こんな老人ホームで働きたいと思った。というのも、学生時代にボランティアで通っていた特別養護老人ホームが住まいというよりも病院のような雰囲気だったから。入居者の方々の個性が香り立つ環境は必要だ。この「日本一小さな有料老人ホーム」に引かれ、現在のロングライフホールディング(当時の社名は関西福祉事業社)に入った。

■「ウォント」「ホープ」を聴き取る

 93年に入社した私は、翌94年に米国のケア施設に派遣され、現地で施設長を務める30代の女性と知り合った。彼女はまるで入居者の孫娘のように接し、話し相手になっていた。施設の庭園のこの場所から見る夕焼けが最高なんだと話す彼女の姿も印象的だった。彼女は日本から派遣されて来た私をもてなし、施設の料理長はケーキを焼いてくれた。これこそがサービス業だと実感した。

 帰国すると、私は、第1号の有料老人ホーム「ロングライフ長居公園」(大阪市東住吉区)のホーム長を任された。心掛けたのは「ニーズ(要求)」と「ウォント(希望)」「ホープ(期待)」。相手のニーズは口から出るけれど、私たちは相手の心の中のウォント、ホープを聴き取ることが重要と思っている。

 ここでは、家族におっしゃらないことを私たちに話す入居者の方もいる。かつて、被爆経験があった男性が自転車で2人乗りをしたいと私におっしゃった。私が自転車をこぎ、この男性が後ろに乗って近くの商店街を走ると、すごく喜んでくれた。この仕事のやりがい、醍醐味(だいごみ)を感じた一瞬だった。

■未来経営戦略デザイナー

 いま、私は経営の立場にあるけれど、組織のトップに立っているのではない。組織作りとして、ロングライフホールディングは「サーバントリーダーシップ」を実践している。お客さまに一番近いスタッフがお客さまの要望に沿ってのびのび働けるように、リーダーはサーバント(奉仕者)の精神を持って全力で支えるという考え方。一番上にお客さま、その下に現場スタッフ、さらにその下にリーダー、そして、管理職、役員と続く構図だ。

 私にはもうひとつ、「未来経営戦略デザイナー」の肩書がある。名刺にも刷っている。人生100年時代、生涯活躍時代に向けて、ロングライフホールディングはサービスを充実させ、超高齢社会の課題解決に全力で取り組んでいく。

 さくらい・ひろみ 1966年、大阪市生まれ。大阪芸術大舞台芸術学科卒。在学中はシニア向けの「いきいき体操」教室を主宰。尊敬する人物は、長島愛生園(岡山県)でハンセン病患者の治療に当たった精神科医の神谷美恵子氏、ノーベル平和賞受賞者のマザー・テレサ氏。

 【ロングライフホールディング】
 1986年創業。当時は関西福祉事業社として訪問入浴サービスから始めた。90年に有料老人ホーム第1号の「ロングライフ長居公園」を開設。昨年春には「ヘルス&ナチュラルビューティ」プロジェクトをスタートし、フード、スポーツ、ビューティの3部門に専門家を置くことで、サービスの強化を図った。ビタミンB3に含まれる成分「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」のサプリメントも医師監修で開発製造販売するなど、「セカンドライフの総合プロデュース」企業として多角的に事業を展開。大阪本社は大阪市北区、東京本社は東京都千代田区。


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