Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

協同組合関西ファッション連合(カンファ)理事長 中村 房雄さん

2021年8月19日

 関西のアパレル産業などが加盟する協同組合関西ファッション連合(KanFA=カンファ=)のトップとして中村房雄理事長(ナックス会長)が再任した。2019年の就任以来、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦しむ会員企業のサポートに努め、ポストコロナに向けた組合の役割を模索する。さらに地球環境保全や多様性にも対応するなど、会員企業だけでなく社会全体に奉仕する組合を目指し、2期目のかじ取りを進める。

■コロナ禍の1期目

 高校卒業後、故郷の静岡県を飛び出し、先輩を頼って大阪に。若い頃は営業部門に属して全国各地を飛び回っていた。32歳で独立。繊維業界一筋に「派手でなくてもいいからコツコツやろう」と堅実な経営を心がけ、多くの人の支えもあり、50年近く事業を継続させることができた。

 本業だけでなく、社会への貢献も常に考えていた。微力ながらも地元・泉大津の商工会議所副会頭やライオンズクラブの重責なども務めさせてもらった。カンファの前身の一つである大阪ニット卸商業組合にも加盟。2007年のカンファ設立時には理事として他の2団体との調整役などをさせていただいた。

 カンファでは11年から8年間、副理事長を務めた。もとより自分はサポート役が適任。業界を取り巻く環境も急速に変化している。若い人の力が必要で、トップに就くつもりはなかった。しかし、周囲に押され「1期だけのつもり」で会長を引き受けさせていただいた。

 コンセプトは「お役に立つ」組合。直後にコミュニケーションの充実を図った。従来は会員企業のトップのみが集うことが多かったが、企業の社員全体まで裾野を広げた。デザイナーや家族も参加できるイベントを企画。多くの人を巻き込んでの運営ができた。

 しかし、20年に新型コロナウイルスが拡大。3月に組合内に対策本部を立ち上げ、対応に当たることとなった。1度目の緊急事態宣言時には大型店舗などが休業。商品を卸したり、自ら店舗を展開している会員企業も大きな打撃を受けた。

 その際に会員には「組合としてできることを何でも言ってほしい」と通達。半年間であったが、コミュニケーションを図る取り組みも奏功し、多くの「生の声」が寄せられた。

 一番、多かったのは財政基盤の弱体化。当時は春物の時期で売り上げ減少だけでなく、在庫として財務を圧迫しかねない可能性も高かった。給付金などの支援もあったが、追いつかずに財務内容が大きく毀損(きそん)してしまった企業も多かった。

 「このままだと冬が越えられるか不安でたまらない」という声を背に、組合のトップとして中小企業の実情を国に陳情。その後、政府系金融機関などから劣後債として資本支援を受けられる枠組みが成立し、会員企業の多くが「人心地ついた」と胸をなで下ろしたと聞いている。

■五つの方針

 ほぼコロナ対応で明け暮れた1期目。本来は後任に道を譲るつもりだった。しかし、収束への道筋が見えにくい中、周囲から「継続してほしい」との声を受け、21年の5月に再任させていただく運びとなった。

 2期目をスタートするに当たり、基本の「お役に立つ」姿勢は崩さず。その上で五つの方針を定めた。一つはコミュニケーション。オンライン、オフラインともに組合員と交流する。二つ目はマーケティング。市場開拓や販売の研究を組合として進め、会員の発展を図る。三つ目はブランディング。組合として価値向上を図る。四つ目はサービス。業務の公平性、透明性を高める。

 そして五つ目に掲げたのはCSRと持続可能な開発目標(SDGs)。各企業だけでなく、組合としても社会全体に「役に立つ」組織を目指そうとする現れだ。CSRについてはこれまでも災害時に被災地への支援や寄付、コロナ禍ではマスクの寄贈などで活動してきた。

 また、SDGsについては勉強会などを開催。昨年、組合独自の賞を設立するなど、啓発活動を中心に活発に取り組んできた。現在、約60社程度が宣言しているが、3年後までに300社まで増やす目標を掲げている。宣言すれば終わりという訳ではなく、持続可能性という意義を常に持ちながら事業を行う機運を醸成していく。

■これからも歴史を

 「紡ぐ」組織へ

 背景には組合の環境がある。数多くの企業が会員となっており、同じ繊維業界と言っても原材料を供給するメーカーから小売販売業まで「川上から川下までそろっている」。多種多様な各企業が連携していくには多様化への対応が迫られている。

 また、業界全体の環境変化もある。全国で供給される衣服は約40億点と30年前の倍に増えている。全てが消費者の手にお届けできるわけではなく、どうしてもいくらかの「在庫」として残ってしまう。

 従来は焼却処分などをしていたが、環境保全の視点から非常に問題である。この問題についても組合として正面から取り組む姿勢を出すべきだと考えた。

 もちろん、簡単に解決できない。しかし、われわれの会員企業には膨大なデータが蓄積されている。デジタル技術を活用したビジネス変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」も使い、適正で効率的な供給、販売体制が構築できると信じている。

 カンファの前身である三つの組合は明治、大正に設立した。また、繊維業界は戦前、戦後の大阪をけん引し、代表してきた産業だ。数多くの諸先輩方のおかげで今の組合、自分はあると思っている。受け継いだ長い歴史を「紡いで」いける組織となるべく、これからも全力を尽くしていく。

 なかむら・ふさお 1941年、静岡県出身。静岡県立袋井商高卒。大阪の光洋繊維などに勤務し、75年、中村ニットセール(現・ナックス)=泉大津市=を設立。2001年に大阪ニット卸商業組合理事などを歴任。2007年に協同組合関西ファッション連合の理事、11年に副理事長、19年に理事長に就任する。
 【協同組合関西ファッション連合】繊維産業の繁栄を目指して2007年、大阪アパレル協同組合、大阪織物卸商業組合、大阪ニット卸商業組合が統合して発足。関西圏を中心に528社が加盟し、相互の情報交換のほか、加盟企業への福利厚生や事務軽減のサポート事業などを行っている。近年では国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」への取り組みも進めている。愛称は「KanFA」(カンファ)。本部は大阪市中央区瓦町2丁目6番9号の大織健保会館7階。


サイト内検索